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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/図書編
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

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《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。
西遊記
サイユウキ
小説
 孫悟空でおなじみの中国の長編伝記小説で、『水滸伝』『三国志演義』『金瓶梅』と並ぶ四第奇書の一つである。
 現在読まれているような全百回の長編小説として成立したのは明代で、著者にはしばしば呉承恩(ごしょうおん)(1500?~1582?)の名があげられる。しかし、これについてはっきりしたことは分かっていない。『水滸伝』がそうであるように『西遊記』もある歴史的事実を骨子にしており、それに長い時間をかけて大勢の人々の手が加わり、史実とはかけ離れた完全なフィクションといえる作品に成長したのである。

 そのもとになった史実とは唐代の高僧・玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)(602~664)の苦難に満ちた西方取経の旅である。玄奘は629年にインド(天竺(てんじく))への旅に出発し、645年に600部を超す大量の経典を長安に持ち帰った。この旅の記録は玄奘自身が『大唐西域記(だいとうさいいきき)』として書き記している。
 これが講談などに取り上げられるうちに完全なフィクションへと作りかえられていった。たとえば、南宋になると玄奘の旅を主題にして『大唐三蔵取経詩話(だいとうさんぞうしゅきょうしわ)』という最初の小説が書かれたが、これには猴行者(こうぎょうじゃ)(孫悟空の前身)、深沙神(しんしゃしん)(沙悟浄(さごじょう)の前進)なども登場するようになった。
 元代になるとこれがさらに発展し、玉帝、西王母、二郎神君といった道教的な天界の神々、如来、菩薩などの仏教の神々、そしてさまざまな魑魅魍魎(ちみもうりょう)、妖怪変化が登場する荒唐無稽の物語となり、題名も『西遊記』となったのである。
 しかし、そのストーリーは全体的には至って単純である。

 主人公の孫悟空は東勝神州敖来国花果山(とうしょうしんしゅうごうらいこくかかさん)山頂の大石から生まれた猿だが、最初はどうしようしようもない暴れ者で、天界に上って大騒ぎを引き起こした。これには天神である玉帝配下の軍団さえ手も足も出なかった。なにしろ、悟空はとんでもない神通力の持ち主で、觔斗雲(きんとうん)という雲に乗って空を飛び、手には伸縮自在の如意金箍棒(にょいきんこぼう)を持ち、身体に生えた八万四千本の毛を一本一本何にでも変身させて敵と戦わせることができる。かつ、抜いた毛は用がすむと再び元通りに身体に戻るのである。
 しかし、釈迦如来にはまったくかなわず、悟空は如来の手のひらから外に飛び出すこともできずに敗北し、五行山に五百年間も閉じ込められた。だが、その後、如来の計らいで、沙悟浄、猪八戒(ちょはっかい)、玉龍三太子(三蔵の乗る白馬)とともに、天竺まで経を取りに行く三蔵法師陳玄奘の供となるのだ。そして、三蔵の旅を成功に導くために襲い来る魔物たちと戦っていく。

 たとえば、第59回の物語では、三蔵一行の前に火焔山(かえんさん)という恐るべき山が立ちふさがる。八百里にわたって火の海で、周囲には草一本はえないという山である。当然、そのままでは一行は山を越えられないが、牛魔王の持つ芭蕉扇(ばしょうせん)があれば火が消せるという。なにしろ、この芭蕉扇、一度あおげば火が消え、2度あおげば風が吹き、三度あおげば雨が降る。また、49回あおげばもう二度と山が燃えることはなくなるという不思議な代物なのである。そこで、孫悟空は牛魔王の娘で翠雲山芭蕉洞に住む女仙人の鉄扇公主(てっせんこうしゅ)(羅刹女(らせつにょ))および積雲山摩雲洞(せきうんさんまうんどう)に住む牛魔王と戦い、霊吉菩薩(りょうきつぼさつ)の援助も受けてどうにかこうにか芭蕉扇という魔法の扇を手に入れる。おかげで三蔵一行も無事に火焔山を越えられるという具合だ。
 こういう困難が次から次へとやってきて、それを孫悟空の活躍で乗り越えるというのが物語のメインである。
 こうして一行はついに天竺へ到達し、膨大な経典を長安へと持ち帰る。そして、最後には仏恩によって三蔵は旃檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)、孫悟空は闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)、猪八戒は浄壇使者(じょうだんししゃ)、沙悟浄は金身羅漢(こんしんらかん)、玉龍は八部天竜(はちぶてんりゅう)という仏となったところで物語は終わるのである。
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