小説
イオの末裔
〔Kindle版〕
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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大目乾連冥間救母変文 |
ダイモッケンレンメイカンキュウボヘンブン |
物語 |
中国唐代後期に寺院などで語られた変文(へんぶん)と呼ばれる作品の一つで、とくに有名なものである。釈迦十大弟子の一人・目連(もくれん)が地獄に落ちていた母を救う物語で、盆の行事の由来を語る『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』と同じ話題だが、はるかに物語性に富んだ内容となっている。
目連は今は亡き父母の恩に報いるために釈迦に入門し、修業によって大いなる神通力を手に入れる。そして両親に会うために天界へ昇るが、父は梵天宮(ぼんてんきゅう)にいたものの、母は天界にはいなかった。父によれば、母は生前に多くの罪を犯したので今は地獄に落ちているというのだ。
驚いた目連はすぐにも地獄に向かい、閻魔の庁を訪ねた。だが、閻魔大王も母の居場所を知らなかった。目連はさらに地獄の奥へと進み、奈河(なか)(三途の川)を超えた。その先に五道将軍がいて、母が地獄の中でも最悪の阿鼻(あび)地獄にいることを教えてくれた。
目連は刀山剣樹地獄、銅柱鉄床地獄などを越え、どんどん地獄の奥へ向かった。そして、阿鼻地獄で母を見付けた。母は身体中に49本の釘を打たれ、口の中で猛火が燃え上がっていた。しかし、いかに神通力のある目連でも地獄の刑罰から母を救うことはできなかった。
それでもどうにかしたい目連は地獄から引き返し再び釈迦を訪れた。釈迦は無数の龍神や天人をしたがえて地獄に下った。すると、神々の放つ五彩の光によって地獄の刑罰がすべて消え失せ、美しく輝く大地や泉が生まれた。多くの地獄の罪人たちも、天上に転生して救われた。
ところが、目連の母は救われなかった。彼女の生前の罪はあまりにも大きかったので、今度は餓鬼道(がきどう)に落ち、飢えと渇きに苦しめられたのである。目連はすぐにも鉢に入った食事を母のもとへ運んだが、母がそれを食べようとすると飯が口の中で猛火に変じた。目連はガンジス川まで飛んで水を汲んできたが、この水までが母親の口に入ると猛火に変じた。
目連は絶望し、またしても釈迦に救いを求めた。事情を知った釈迦は、目連の母親を救うには、1年後の7月15日に盛大な盂蘭盆を営む必要があるといった。目連は1年に1度だけではなく、せめて月に1度は母親を満腹にしてやりたいといった。が、釈迦がいうには、盂蘭盆はけして目連の母のためだけに行うのではなく、すべての餓鬼を満腹にするために行うので、1年に1度でなければならないといった。
こうして1年たった7月15日、目連は盛大な盂蘭盆を営んだが、そうすると目連の母もその盆の中から食事を得て、初めて満腹することができた。この後、目連の母はさらに黒犬に生まれ変わってしまうのだが、母を思う目連が七日七晩大乗経典を読み続けたことで、最後は人間の姿に戻り、ついに天界に生まれ変わることができたのである。 |
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