小説
イオの末裔
〔Kindle版〕
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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杜子春伝 |
トシシュンデン |
小説 |
中国唐代晩期の短編伝奇小説。9世紀半ばの李復言(りふくげん)の伝奇集『続玄怪録』所収。芥川龍之介の短編小説『杜子春』はこの小説の翻案である。
周から隋(ずい)にかけての時代のこと。遊び呆けて財産を失った杜子春がぼろをまとい長安の東市の西の木戸あたりをうろついていると不思議な老人が現れ、子春に三百万の銭を与えた。だが、子春はまた遊び呆けて、一、二年のうちに一文無しになった。すると前回と同じ場所に老人が現れて、今度は一千万の銭をくれた。ところが、今度もまた子春は放蕩三昧の暮らしをはじめ、一、二年のうちに前よりひどい貧乏人になってしまった。
そのとき、また同じ場所で老人に会うと、老人は今度は三千万の銭をくれた。これまでのことがあったので子春も反省し、この金で世間の義理を果たしたら何もかも老人の言う通りにしようといって再会を約束した。
やがて期日が来た。すでに身辺を整理し、世のためになることもした子春が崋山に行くと約束の場所に老人がいた。老人は丸薬を与え、子春がそれを飲むと、これから起こることはすべて幻だから何があっても物を言ってはいけないといって立ち去った。それから、幻が子春を襲い始めた。まず、大勢の武者が出現して子春を脅した。さらに、毒竜・獅子・さそり・蝮(まむし)などが出現した。鬼が現れ、子春を釜ゆでにすると脅し、子春の妻を鞭打った。子春は首を切られ、冥土であらゆる責め苦を受けた。
その後、閻魔は子春を女に生まれ変わらせた。子春は物を言わなかったので周囲から唖だと思われたが、縁があって結婚し、子をもうけた。それでも子春は黙り続けたが、あるとき夫が激怒して幼い子供の頭を石に叩きつけた。これを見た子春は老人との約束を忘れ、あっと声を上げた。この瞬間幻が消え、子春は元の場所に座っていた。老人は残念がった。実は老人は、仙人になるための霊薬を作っていたところで、もし子春が人間のあらゆる感情を忘れ、黙り続けていれば霊薬は完成し、子春は仙人になれたのだという。
だが、子春はただひとつ「愛」を忘れられなかった。このため、子春はこの後も俗界で生きなければならなくなったのである。 |
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