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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/図書編
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

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《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。
平妖伝
ヘイヨウデン
小説
 中国、明代末期に成立した長編小説で、全四十回。元末に羅貫中(らかんちゅう)によって全二十回の『三遂平妖伝(さんすいへいようでん)』が作られたが、それを文学者の馮夢龍(ふうぼうりゅう)が改訂して内容を膨らませた。
 『水滸伝(すいこでん)』や『西遊記(さいゆうき)』などのように一応は史実がもとになった小説である。北宋の仁宗(しんそう)皇帝の代に貝州(ばいしゅう)(河北省)で王則(おうそく)の乱があった。宗教的な農民暴動だが、そこに妖術を使う多数の妖人が加わっていたと、『宋史』にも記されている。
 この事件が人々の注目を集め、『西遊記』のごとく多数の妖怪、妖人が登場する荒唐無稽な神魔小説としてまとめられたのである。
 それで、小説『平妖伝』で王則の反乱を扱っているのは物語も終盤になってからで、全体の四分の一ほどにすぎない。そこまでは王則の乱に参加するさまざまな妖人たちの物語で、いわば妖人銘々伝(めいめいでん)となっている。
 物語の舞台は北宋仁宗皇帝の代だが、その発端は春秋(しゅんじゅう)時代までさかのぼる。
 あるとき、妖術使いの白猿神(はくえんしん)・袁公(えんこう)という者が天界の書物庫の宝箱をこじ開けて、一冊の本を盗み出した。天罡(てんこう)36、地煞(ちさつ)72、合計108の秘術が記された如意冊(にょいさつ)(如意宝冊(にょいほうさつ))である。袁公はすぐに故郷の雲夢(うんぼう)山白雲洞に逃げ帰り、その内容を石壁に書き写した。このことはすぐに玉帝(天界の王)の知るところとなり、袁公は捕えられ、罰としてその内容が漏れないように白雲洞の番人を命じられるのである。
 ここから一気に時代が飛んで北宋の仁宗皇帝の代となり、後に王則の乱に協力することになる妖人たちの銘々伝が始まる。
 まずは、変化の術を使う狐の親子で、母の聖姑姑(せいここ)、兄の胡黜児(こちゅつじ)、妹の胡媚児(こびじ)である。あるとき、黜児が人を化かそうとして左股に重傷を負ったの機に一家は旅に出る。その途中、崋山の近くで聖姑姑の前に悪名高い唐代の女帝・則天武后(そくてんぶこう)の霊が現れ、あることを告げる。自分はこれから生まれ変わり、前世と同じく皇帝になる。28年後に貝州で会おう、というのである。
 続いてが蛋子(たんし)和尚登場する。蛋子とは卵のことである。あるとき、泗州迎暉寺(ししゅうげいきじ)の慈雲老人が川を流れる卵を拾って温めたところ、人が生まれた。それが蛋子和尚である。15歳で修行の旅に出た蛋子和尚だが、その途中で雲夢山白雲洞に忍び込み(袁公は留守だった)、石壁から如意冊の内容を写し取ったのである。蛋子和尚はその文字を解読できなかったが、聖姑姑ならば読めると聞いて彼女のもとを訪ねる。
 こんな風に妖人たちをめぐる物語が次から次と展開する。そして、妖人たちは都で大騒動を起こした後でついに貝州へ赴き、そこで軍人の王則に出会う。この王則こそ則天武后の生まれ変わりなのである。
 これから王則が不平を持つ兵士や農民を結集して反乱を起こすが、強烈な妖人たちが味方にいるので朝廷の討伐軍も敵ではない。反乱軍の勢力は一気に拡大する。しかし、この反乱の遠因が如意冊の秘術だったことは天界でも問題となっており、ついに九天玄女(きゅうてんげんじょ)など天界の神仙たちが朝廷軍の応援に駆け付けることとなった。こうして、反乱は鎮圧され、さしもの妖人たちも退治され、それ相応の処罰を受け、王則も処刑されることになる。まさに、『平妖伝』=「妖魔を平らげる(退治する)物語」なのである。
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