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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/図書編
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。
牡丹燈記
ボタントウキ
小説
 中国、明代初期の怪奇小説集『剪燈新話(せんとうしんわ)』(瞿佑(くゆう)作)に収められた一遍で、日本で有名な『怪談牡丹灯籠(かいだんぼたんどうろう)』のもとになった小説。
 次のような話である。
 元末、明州(浙江省鄞県(せっこうしょうきんけん))では正月元宵(げんしょう)の燈籠見物がにぎわった。
 妻を亡くして一人暮らしだった喬生(きょうせい)という男がさびしく門にたたずんでいると、夜更けに十七、八歳の美人が牡丹の形の燈籠を侍女に持たして通りかかった。あまりに美しいのであとをつけると彼女は笑いながら話しかけた。彼女の名は符漱芳(ふそうほう)、字(あざな)は麗卿(れいきょう)、もと奉化(ほうか)県の州判(地方官)の娘だが、いまは侍女・金蓮(きんれん)と二人きり、月湖の西に住んでいるという。その夜、彼女は彼の家に泊まったが、次の日もその次の日も彼女はやってきて彼と愛し合った。
 半月ほどたち、隣家の老翁が不思議に思い壁に穴をあけて中をうかがうと、化粧した骸骨が喬生とむつまじく語り合っていた。老翁は驚き、翌朝すぐに喬生に事実を告げた。そして、彼女が住んでいるという西湖に行ってみれば正体がわかるだろうといった。彼が行ってみると湖心寺という古寺の奥の一室に棺が置いてあり、「もとの奉化州判の娘、麗卿の柩」と書いた紙が貼られていた。その前には牡丹燈があり、その下に人形の侍女が立っていて、背中に「金蓮」と書いてあった。彼は恐怖に青ざめ、一目散に逃げ帰り、その夜は老翁の家に泊めてもらった。翌日、老翁のすすめで、呪(まじな)いでは当代随一という玄妙観の法師を訪れ、お札をもらったので、それからは麗卿はやってこなくなった。
 ところが、ひと月ほどして喬生は友人と酒を飲んで酔っ払い、その帰り道に湖心寺の前を通ってしまった。すると門前に金蓮がおり、彼の薄情を責め、寺の奥の部屋まで彼を引き込んだ。そこには麗卿がいてやはり彼の薄情を責めたが、彼の手を引いて棺の前まで行くと棺の蓋が開き、二人が中に入るやぴたりと閉じた。
 この日、彼が帰らないのを知った隣家の老翁は心配してあちこち捜し回ったが、寺に来ると棺から彼の着物がはみ出していた。寺僧に頼んでふたを開けると喬生は女の死体と重なるようにしてすでに死んでいた。そして、女の顔はまるで生きているようだった。それから、月の見えない暗い夜には喬生と麗卿が手を携え、その先を牡丹燈を持った侍女が歩いて行くのが見られるようになったのである。
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