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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/地名編
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崑崙山
コンロンサン
神話
 中国神話において、西方にあるとされた神々の山。天界と地上を結ぶ、天梯のひとつでもある。現在、崑崙山と呼ばれている現実の山とは無関係である。
 崑崙山は中国神話の最高神である黄帝の地上における住居があるところで、人間がたどり着けないほど遠い西方にある。中国古代の地理書『山海経(せんがいきょう)』「西山経」によれば、その位置は瑶水(ようすい)という河の西南へ四百里となっているが、『大荒西経』では西海の南、流沙(りゅうさ)のほとりにあるという。「海内西経」によると、崑崙山は貊国(はくこく)の西北にある。その広さは八百里四方あり、高さは一万仞(約1万5千メートル)ある。山の上に木禾(ぼっか)という穀物の仲間の木があり、その高さは五尋(ひろ)、太さは五抱えある。欄干が翡翠(ひすい)で作られた9個の井戸がある。ほかに、9個の門があり、そのうちの一つは「開明門(かいめいもん)」といい、開明獣(かいめいじゅう)が守っている。開明獣は9個の人間の頭を持った虎である。崑崙山の八方には峻厳な岩山があり、英雄である羿(げい)のような人間以外は誰も登ることはできない。また、崑崙山からはここを水源とする赤水(せきすい)、黄河(こうが)、洋水、黒水、弱水(じゃくすい)、青水という河が流れ出ているという。
 紀元前2世紀に編纂された『淮南子(えなんじ)』にはもっと詳しい記述がある。
 それによると、崑崙山には九重の楼閣があり、その高さはおよそ一万一千里(4千4百万キロ)もある。山の上には木禾があり、西に珠樹(しゅじゅ)、玉樹、琁樹(せんじゅ)、不死樹という木があり、東には沙棠(さとう)、琅玕(ろうかん)、南には絳樹(こうじゅ)、北には碧樹(へきじゅ)、瑶樹(ようじゅ)が生えている。四方の城壁には約1600mおきに幅3mの門が四十ある。門のそばには9つの井戸があり、玉の器が置かれている。崑崙山には天の宮殿に通じる天門があり、その中に県圃(けんぽ)、涼風(りょうふう)、樊桐(はんとう)という山があり、黄水という川がこれらの山を三回巡って水源に戻ってくる。これが丹水(たんすい)で、この水を飲めば不死になる。
 また、崑崙山には倍の高さのところに涼風山があり、これに昇ると不死になれる。さらに倍の高さのところに県圃があり、これに登ると風雨を自在に操れる神通力が手に入る。さらにこの倍のところはもはや天帝の住む上天であり、ここまで登ると神になれるという。
 このように、古い時代には崑崙山は天帝である黄帝の山だった。しかし、時代が下ってくると崑崙山はむしろ西王母の山とされるようになった。西王母は西方に住むとされた不死や復活を司る女神で、仙人の神様である。崑崙山はもともと不死の天国のような山であり、黄帝という神も神仙思想と関係が深いが、西王母の山とされたことでなおさら仙人との関係が深くなったといっていい。
 たとえば、四世紀ころに成立した『拾遺記』には、崑崙山は太陽や月よりも上にそびえる高い山で、虹色の雲に覆われ、大勢の仙人たちが竜やツルに乗って遊んでいると記されている。
 別な説では、崑崙山上には天に届くほど高い天柱という銅の柱がある。これは完全に丸い柱で、胴回りが三千里もあり、その下に仙人の居室が9室ある。柱の頂上には鶉鳥という巨鳥がおり、南を向き、左の翼を広げて東王公を包み、右の翼で西王母を包んでいるという。東王公は西王母と対になるような男性の仙人の神様である。
 しかし、黄帝の山であれ、西王母の山であれ、崑崙山が神々の住む不死の霊山で、天界への入り口とされたことに変わりはなかった。
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