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触氏・蛮氏 |
ショクシ・バンシ |
荘子 |
国 |
中国、戦国時代の道家の書『荘子』則陽篇第二十五で、賢者の戴晋人(たいしんじん)のたとえ話に出てくる国。触氏、蛮氏ともに蝸牛(かたつむり)の角の上にある国で、触氏は左の角、蛮氏は右の角の上にある。
斉(せい)と魏(ぎ)が戦争寸前の緊張状態になったときのこと。戴晋人が魏の国王にいった。「蝸牛という生き物がおります。その左の角に触氏、右の角に蛮氏というものが国を構えていました。それが領土を争って戦争をはじめ、死者数万、さらに15日間も敵を追撃して鉾を収めたといいます」
「馬鹿馬鹿しい、嘘ではないか」と魏王がいうと戴晋人はいった。
「では、真実の話に置き換えましょう。王はこの宇宙に際限があるとお考えですか」
「いや、無限だろう」
「では、その無限の宇宙に心を置いてみましょう。この地上の国などどこも取るに足らない国に違いありません。いま、その中に魏という国があり、梁という都があり、その王が斉を攻めようかどうかと思い悩んでおります。いったい蝸牛の角上の触氏、蛮氏といかほどの違いがあるのでしょう」
これを聞いて王はすべてを悟り、戦争を中止したという。 |
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