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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/地名編
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桃源郷
トウゲンキョウ
伝説
ユートピア
 古くから中国に伝わるユートピア。4、5世紀の詩人陶淵明(とうえんめい)の代表作「桃花源記(とうかげんき)」が伝説のルーツになっている。
 物語の舞台は4世紀である。あるとき、河南省の武陵(ぶりょう)の漁師が魚を捕るうちに渓谷の奥深くに入り込み、道に迷ってしまった。そのうち、漁師の船は両側にびっしりと桃の花だけが咲き乱れる渓谷に入り込んだ。その先の小山があり、洞窟があったので、漁師は船を捨てて洞窟に入り込み、先へさきへと進んだ。と、洞窟を抜けきったところに不思議な村が出現した。村人の姿は一般の村と違っていないが、いかにも平和で美しい村だった。そのうち村人が気がついて話しかけてきたので、漁師は自分がどうしてここにいるのかを説明した。これを聞いた村人たちは興味を示し、漁師を家に招待して大いにもてなした。そして、村人たちは次のように話した。
 「自分たちの祖先は秦(しん)の時代に戦乱を逃れて一族郎党を引き連れて人里離れたこの土地にやってきた。それ以来世間とは縁を切り、村からは一歩も出ていない」
 つまり、この村人たちは500年間も世の中と切り離された場所で生活していたのである。このため、彼らは秦から漢(かん)へ、魏(ぎ)から晋(しん)へと時代が変わったことも知らなかったという。
 こうして漁師は数日間温かくもてなされて村を出た。もう一度来てみたいと思った漁師は途中ところどころにしるしをつけながら自分の町まで帰った。ところが、漁師の話を聞いて大いに興味を持った町の長官が部下を派遣してその村を探させたが、もう二度と見つけることはできなかったというのである。
 ところで、この漁師は洞庭湖(どうていこ)から沅水(げんすい)をさかのぼったものと考えられている。したがって、沅水上流域のどこかに伝説上の桃源郷はあったということになる。

→洞庭湖
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