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フランボワイヤン・ワールド
中国神話伝説ミニ事典/地名編
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比丘国
ビクコク
西遊記
 中国明代の小説『西遊記』で天竺国(てんじくこく)へ取経の旅をした玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)一行が立ち寄った国の一つ。三蔵一行は獅駝国(しだこく)(獅駝嶺獅駝洞(しだれいしだこく))を過ぎてさらに西に旅を続けてこの地に至った。
 比丘国に入った三蔵一行は大通りの家々の門口に鵞鳥(がちょう)の籠が伏せてあるのに気がついた。しかもその籠の中には五歳から七歳くらいの子供が入っていた。宿の者がいうには、それこそ国王の無道の振る舞いだという。その話によれば、三年前のこと、道士風の老人がやってきて、十六歳くらいの美しい娘を国王に献じた。国王は娘を寵愛し、皇后としたが、それからというもの房事に夢中で元気が衰え、いまや明日の命も知れぬほどに衰弱していた。
 一方、娘を献じた道士は国王の外戚として権力を振るったが、神仙の術にも通じていた。そこで国王のために三神山(さんしんざん)などに赴いて不老長寿の薬を入手したが、それを飲むには特別な煎じ汁が必要だという。その煎じ汁というのが千百十一人の子供の心肝から得られるもので、これで薬を服用すれば千年の長寿が得られるといって国王をそそのかしたのである。
 この話を聞いた悟空はすぐにも城隍神(じょうこうしん)、土地神、掲諦(ぎゃてい)などの神々を集め、子供たちを救出させた。ところが、子供たちがいなくなってしまうと、道士は今度は三蔵に目をつけた。三蔵ほどの僧の心肝から得た煎じ汁で薬を服用すれば、千年どころか万年も生きられると考えたのだ。
 道士が三蔵を狙っていると知った悟空はいち早く三蔵に化けて戦いを挑んだ。すると道士は妖怪の本性を現し、皇后を連れてすぐにも逃げ出した。その先は比丘国から70里ほど南の川辺にある柳枝坡精華洞(りゅうしはしだどう)だった。悟空と八戒がこれを追い、精華洞から妖怪を追い出した。
 ところがここに突然、天界の神である南極老人星が出現した。実は道士に化けていた妖怪は南極老人星の乗用だった白い鹿が逃げ出して、下界で妖怪となったものだったのである。そこで悟空はその妖怪は殺さずに南極老人星に返した。
 道士の娘は白狐が変じた妖怪だったので、これは八戒が打ち殺した。
 こうして比丘国王を妖怪の魔手から救った三蔵一行はこの地で大いに歓迎され、さらに旅を続けることになった。

→獅駝嶺獅駝洞、三神山、柳枝坡精華洞
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