小説
イオの末裔
〔Kindle版〕
販売開始しました。 |
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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イオの末裔
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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内外提点殿前太尉
ないがいていてんでんぜんたいい |
洪進
こうしん |
百八の魔王を逃がしてしまったわがままな役人 |
洪進は水滸伝に登場する豪傑たちがこの世に誕生するきっかけを作ってしまった朝廷の高官である。
水滸伝に登場する百八人の豪傑たちは36の天罡星、72の地煞星の生まれ変わりとされるが、これらの星にはもともと魔王が宿っていた。魔王といえばこの世に災厄をもたらす存在なので、唐の時代に洞玄国師という立派な道士がこれらの魔王を竜虎山の地下に封じ込めた。これから、竜虎山は道教の大本山となり、魔王を封じ込めた場所には伏魔の殿が建てられ、決して開けてはならない場所として、厳重に守られることになった。この場所にのこのことやってきて、権力を振り回して道士たちを脅し、無理矢理に開けさせてしまったのが洪進なのである。水滸伝のメインの物語とは全然関係ないが、こういう変な奴がいて、メインの物語が始まることになるのである。 |
洪進の物語 |
◆皇帝の命令で竜虎山を訪ね虚清天師に会う
水滸伝の豪傑たちが生まれてくるよりも数十年前のこと。宋の皇帝が仁宗だった時代に洪進は朝廷で治安警護を担当する大尉を務めていた。
仁宗皇帝の時代は長い平和が続いたが、あるとき東京を中心に悪疫が流行するという大きな災厄に見舞われた。嘉祐3年(1058年)3月3日に役人たちから事態の深刻さを知らされた皇帝は、天下の罪人に大赦の恩典を下し、民間の税金を免除し、都にある宮や寺に疫病退散の祈願を行わせた。しかし、意に反して、疫病はますます猛威を振るった。皇帝は大いに悩み、再度役人たちを集めて協議した。するとひとりの役人が前に出て、「この災厄を払うには道教の大本山・竜虎山の法主・嗣漢天師をお呼びし、宮中にて星祭りを行い、天の神々に祈願していただくのがよいでしょう」と申し出た。仁宗皇帝はこの意見を採用するとすぐにも詔勅を下し、太尉の洪進を勅使に任命し、竜虎山に派遣することに決めた。
命令を受けた洪進は皇帝から詔書を受け取ると従者を引き連れて東京をあとに信州貴渓県の竜虎山に向かった。
何日かの旅のあとで竜虎山についた洪進一行は宮の住持や大勢の道士たちに迎えられ、数多くある殿のひとつに招き入れられた。洪進は「天師はいまどこにおいでですか」と住持に尋ねた。住持は「当代の天師さまは虚清天師と申し、いたって超俗なお方で、世間とのつき合いを好まず、竜虎山の頂に茅葺きの庵を結んで修行しておいでなので、ここにはいらっしゃいません。ご詔勅は殿中に安置し、太尉様はとりあえず方丈でお茶でも召し上がってください。それから考えましょう」という。そこで洪進は方丈でお茶と食事をとり、そのあとで、「天師が山頂にいらっしゃるのなら、使いの者をやってここに来ていただけばよかろう」と住持にいった。すると住持は「天子さまは山頂におられるとはいえ、霧に乗り雲を湧かせてあちこち飛び回っているのです。使いをやったところで会うことはできません」という。「それは困った。いま都ではひどく疫病が流行っており、皇帝陛下は天師さまのお力で万民を救いたいとお考えなのだ」「そういうことなら、まず太尉様が誠心誠意、斎戒沐浴し、白衣に着替え、従者を連れずにただ一人でお香を焚いて山に登り、天師さまにお願いするしかないでしょう。そうすれば会うこともできましょう」と住持はいった。洪進はすぐにもそうすることに決めた。
翌朝、洪進は精進の朝食を済ませ、上から下まで白衣に着替え、麻の草鞋を履き、銀の香炉にお香を焚きながら、教えられた山道を登っていった。
たいして進まないうちに洪進は脚がくたくたになり、「俺は朝廷の高官なのに、なんでこんなことをしなければならぬのだ」と腹の中で思い、それから間もなく肩で息をし始めた。と、突然、松の木の間からうなり声をあげてまだらの虎が一匹躍り出てきた。洪進は悲鳴を上げてしりもちをついた。が、虎は何もせず、洪進の回りを行ったり来たりして吼え立てたあと、後ろの崖下に姿を消した。恐ろしさにがたがたしていた洪進はしばらくしてからやっと立ち上がり、再び香炉を持って山を登っていった。少し歩いたところで洪進は、「陛下の命令でこんなところまで出向いてきたが、まったく恐ろしい目にあったものだ」と思った。と、今度はすぐ側の茂みから真っ白な大蛇が現れた。洪進はわっと叫んで香炉を投げ出し、背後の岩にしがみついた。すると大蛇は洪進の真ん前までやってきてとぐろを巻き、目をぎらつかせ、大きな口を開けて赤い舌を動かした。そして大蛇はするすると動き出し、どこかへ姿を消してしまった。「やれやれ、驚くことばかりだ」と洪進はいい、岩から身を離すと香炉を拾い上げ、さらに山道を登っていこうとした。そのとき、松の木の向こうから笛の音が聞こえてきた。見れば、ひとりの童子が牛の背に横向きに乗り、鉄笛を吹きながらやってくるところだった。「君はどこから来た。わしを知っているか」と洪進は呼びかけた。童子は笑いだし、「天師さまに会いに来たんだろう」。「牛飼いのくせに、どうして知ってる」と洪進がいうと、童子は「今朝、天師さまのおそばにいたとき、天師さまから聞かされたんだ。皇帝陛下が洪という太尉を派遣され、わしに悪病払いをせよとおっしゃる。わしはこれから雲に乗って都を訪ねるとな。これから山に登っても天師さまは出かけたあとだろうから、行かない方がよいぞ。猛獣や毒虫がいっぱいいて命が危ないぞ」といった。「嘘をいうな」と洪進がいうと、童子は笑いながら坂をめぐって姿を消してしまった。洪進は、童子が何もかも知っていたのを不思議に思いながらさらに登ろうとしたが、「いやいや、このまま行ったら本当に命を落とすに違いない」と思い直し、山を駆け下りていった。
宮に戻った洪進は、「まったく虎だの大蛇だのが住むひどい山じゃないか。それでもわしが登っていこうとするとひとりの童子が現れ、天師さまはすべてを知っていて東京に行くといわれたという。それでわしは戻ってきたのだ」と事情を説明した。すると、これを聞いた住持は「見逃しをなされましたな、太尉さま。その童子こそ天師さまです」。洪進は大いに驚いたが、「ご安心ください。天師さまが行くとおっしゃったのなら、太尉さまが御帰京のころには天師さまは星祭りをすっかり済ませていることでしょう」と住持がいうので安堵した。
◆太尉の権力にものをいわせ伏魔殿の封印を開く
竜虎山の天師さまを東京に招くという仕事を済ませた洪進はその日は宮の方丈で盛大な饗応を受け、そこで一泊した。
翌朝、洪進がすぐにも都に立てばよかったのだが、そうはならなかった。朝食後、住持や道士たちが洪進を境内見物に誘った。仕事を済ませて得意の洪進は喜んで見物に出発した。三清殿、九天殿、紫微殿、北極殿と、見事な伝の数々を道士たちに案内されて洪進は見て回った。やがて紅い土塀で囲まれたとある殿の前まで来てみると、正面の二枚扉の格子戸にいかつい錠がかけてあった。扉のあわせ目には十数枚のお札が張られ、札には朱印が押されていた。軒に額があり、金文字で「伏魔之殿」と書かれている。「この社殿は何だ」と洪進が訪ねると、住持は「ご先祖の老祖天師さまが魔王を封じ込めた社殿です」という。「こんなにたくさんお札があるのはどうしてだ」「唐の時代に老祖天師さまが魔王を封じ込めてから、天師さまが替わられるごとにお札を一枚ずつ加えてきたのです。すでに八代か九代の天師さまが替わられましたが、錠には銅が流し込んであり、扉を開けたものはございません」
これを聞いた洪進は是非とも中を見たくなり、「その扉を開けよ。どんな魔王がいるのか確認したい」といいだした。「とんでもございません」と住持は押し止めようとしたが、洪進は聞かなかった。「どうしても開けないなら、朝廷に帰ってから、おまえたちを訴えてやる。おまえたちが道術を見せびらかすために、魔王を封じ込めたなどと嘘をついているとな」という。これには住持もどうすることもできず、いやいやながらも下働きの人夫たちを呼び集め、お札をはがし、錠を打ち壊し、扉を開けた。中は真っ暗だったので松明をともすと社殿の真ん中に高さ5、6尺(15~18m)の石碑が建っていた。石碑の表面に文字があったが、神代文字だったので誰も読めなかった。が、裏を見ると普通の文字で「遇洪而開(洪に遇(あ)いて開く)」と書かれていた。これを見て洪進は喜び、「おまえたちは邪魔したが、これを見ろ。数百年も前からわしの苗字が書かれているではないか。洪に遇いて開く、というのだからわしが開けなければならないのだ。よし、人夫を集めて石碑の下を掘れ」といった。「いけません。人々に災厄がふりかかります」と住持は繰り返し止めようとしたが、今度もまた洪進は聞かなかった。住持は仕方なく人夫を集めて石碑を押しのけさせ、半日がかりで台座の石亀を掘り起こした。それからさらに3、4尺掘り進むと、1丈(30m)四方もありそうな巨大な一枚岩に突き当たった。洪進はこれも開けよと命じる。そこで、みなが力を合わせて一枚岩を起こしてみると、その下は底なしの深い穴で、何ともいえぬ不気味な音が響いている。と、間もなくその響きが治まり、穴の中から一筋の黒い煙が立ちのぼってくるや社殿の一角をはねとばしてしまった。黒い煙はそこから空高くへと立ちのぼると、ふいに幾百もの金色の光となり、四方八方に飛び散っていった。
社殿にいた者たちは驚き、叫び声をあげて逃げ出した。廊下まで逃げたところで洪進はやっと住持を捕まえ、「いったいどんな妖魔が逃げ出したのだ」と尋ねた。住持は答えた。
「大変なことになりました。その昔、開山の天師さまがこの社殿にお札を張ってこう申したのです。この社殿には、36柱の天罡星と72柱の地煞星、あわせて108人の魔王が封じ込められている。万一、彼らが世に出るようなことになれば、世の人々に大いなる苦しみが下ろうと。太尉殿、あなたはいま、奴等を逃がしてしまったのです」
洪進は恐れおののいた。すぐにも荷物を整えると従者ともども都へ向かった。その途中、洪進は従者たちに、妖魔を逃がしてしまったことについては誰にもいうなと命じた。皇帝に知れたら罰を受けることになるからだ。
洪進が都に戻ると、竜虎山の天師さまはすでに星祭りを済まし、雲に乗って竜虎山に戻っていったあとで、悪疫はすっかり治まり、天下は泰平になっていた。洪進は妖魔のことは一切語らず、仕事を済ませてきたことだけを皇帝に報告した。このため、洪進は褒美を受け、何事もなかったようにその後も太尉として働くことになった。しかし、空に飛び散った108人の魔王たちは、それから数十年後に人間として生まれ変わり、波瀾万丈の物語を展開することになったのである。 |
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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