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フランボワイヤン・ワールド
水滸伝の豪傑たち
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。
 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

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旧梁山泊頭領
きゅうりょうざんぱくとうりょう
王倫
おうりん
梁山泊を乗っ取られてしまった最初の頭領
 王倫は、大物の豪傑たちによって生まれ変わる以前の梁山泊で第一の頭領をしていた山賊である。そのころの梁山泊には大物の豪傑はひとりもいなかったので、第一の頭領といっても王倫は大した豪傑ではなかった。大したことがないばかりか、器量が狭く、陰険で、自分より腕の立つ豪傑を仲間にしたがらないところがあった。この性格のために、最後は林冲に殺され、梁山泊を乗っ取られてしまうことになった。
王倫の物語
◆林冲の実力を恐れて追い払おうとする

 王倫はもとは書生で科挙の試験に失敗し、やけになって杜遷とともに梁山泊で山賊家業を始めた。そこに宋万も加わり、梁山泊の勢力はどんどんふくれあがり、やがて七、八百人の手下を率いるまでになった。
 そんなある年の冬、見張り役として梁山泊の岸辺に居酒屋を出していた朱貴が、頭領たちのいる聚義庁へひとりの男を連れてやってきた。王倫は杜遷、宋万とともに男を出迎え、席につかせた。朱貴は男を紹介し、「この方は東京八十万禁軍の教頭・林冲殿です。高太尉の罠にはまって滄州に流罪となり、そこでも命を狙われてやむなく三人を殺して逃げだしたところ、偶然にも柴進殿に助けられ、梁山泊を紹介されたということです。柴進殿からの推薦の手紙もあります」といった。王倫は柴進とは親しく手紙をやりとりする関係だったので、その手紙を読みながら、「柴進殿はお元気ですか」と尋ねた。しかし、王倫は質問しながら別なことを考えていた。「おれはいつの間にか梁山泊で山賊たちを率いるようになったが、とくに腕が立つわけじゃない。杜遷や宋万はなおさらだ。そこへ都で禁軍の教頭をしていたようなすごい奴が入ってきたら、おれたちの手に負えなくなるに違いない。ここはうまいことをいって山から追い出してしまおう」
 こう思った王倫は林冲をもてなす宴席を設けたあと、手下の者たちに五十両の銀やその他の贈り物を持ってこさせ、立ち上がっていった。「柴進殿からのご推薦ではありますが、この寨には糧食も乏しく、建物の整っておりません。これでは後々になって林冲殿に迷惑がかかることになるでしょう。そこで、ここに多少の土産を用意しましので、これをお納めになって、どこかにもっと大きな寨を捜していただき、身を落ちつけていただくことにしたいのですが」
 林冲は「待ってください。わたしは路銀ほしさに来たのではないのです。とにもかくにも山寨の仲間に入れて欲しいのです」といったが、王倫は「いやいや、ここは林冲殿には小さすぎます」と繰り返した。これを聞いた朱貴、杜遷、宋万は「兄貴、いくらこの山寨が小さいといっても、林冲殿ひとりくらいならどうにかなりますよ。それに柴進殿の推薦もあるのですから、林冲殿を仲間に入れないというのでは仁義がたたないでしょう」と王倫をいさめた。王倫はなおも反対し、「とはいえ、この人は滄州でどえらい罪を犯しているのだ。この山の仲間になりたいといっても、何を企んでいるかわからぬではないか」といった。すると林冲は「わたしは死罪を犯して逃げてきたのです。どうして疑うのです」。こうなるとさすがの王倫もいつまでも反対するわけにはいかず、「それなら、本当に仲間入りするという証拠に誓約書を出しなさい」といいだした。この誓約書というのは、心から仲間入りするという証拠に、山を下りて誰かひとりを殺し、その首を持って来るというものだった。「期限は三日。三日の間に誓約書を持ってくれば仲間入りということにしましょう」と王倫はいった。
 そこで林冲は翌日から三日間、朝になると山を下り、梁山泊近くの街道でちょうどいい獲物になるような旅人を待つことになった。が、一日目も二日目も獲物は現れず、林冲は手ぶらで山に戻った。王倫は笑い、「もう二日たちましたな。明日もまた獲物が現れなかったら戻ってくる必要はありませんよ。どうかそのままよそへ行ってください」といった。
 ところが、三日目の午後になって、林冲が獲物を見つけたと手下の者たちが山寨に知らせに来た。王倫は杜遷、宋万、朱貴を引き連れて急いで山を下りると、川を隔てた岩場から林冲の戦いぶりを見物した。この戦いがすごかった。林冲の腕も見事だが相手の大男も同じくらい見事な腕前で、戦いは一進一退、なかなか勝敗が決しなかった。これを見た王倫は「二人ともちょっと待ってくれ」と声をかけた。二人が戦いをやめると林冲は手下を引き連れて川を渡り、「いや見事な戦いぶり。こちらはわれらが兄弟の林冲だが、青あざのあるあなたはいったいどなたで」と林冲の相手に尋ねた。男は、楊志と名乗った。「青面獣というあだ名の方か」と王倫。王倫は科挙の試験を受けに東京に行ったとき、その噂を聞いたことがあったのだ。相手がそうだというと、王倫は喜んで楊志を山寨に招いた。王倫は宴席を用意し、楊志と林冲をもてなしたが、このときこんなことを考えた。「林冲ひとりを仲間にしたのでは、俺たちの立場が危ない。楊志も一緒に仲間にして、林冲と牽制し合うように仕向けよう」
 しかし、楊志は東京で仕官するという夢を持っていたので王倫が頼んでも仲間入りを承知せず、翌朝には東京へ旅立つことになった。こうなると、王倫としてもいまさら林冲を追い出すわけにも行かず、林冲の仲間入りを認め、王倫、杜遷、宋万に次ぐ第4の椅子に座らせ、朱貴を第5位とすることにした。

◆晁蓋一味を追い払おうとして林冲に殺される

 それから半年ほどは大きな事件もなく月日は流れたが、6月になってから、とんでもない豪傑たちが大挙して梁山泊を頼ってきた。北京大名府長官・梁中書から東京の宰相・蔡京に贈られた生辰綱を略奪して追われる身となった、晁蓋、呉用、公孫勝、劉唐、阮小二、阮小五、阮小七の7名である。いつものように朱貴の案内で山寨にやってきた豪傑たちを王倫は礼を尽くして出迎え、盛大な酒宴を開いた。しかし、この席上で晁蓋たちのしでかした大事件を知らされた王倫は、林冲がやってきたときと同じように不安に駆られた。こんな連中を仲間にしたら、今度こそ間違いなく頭領の座を奪われると考えたのだ。
 王倫は翌日も宴席を設けると7名の豪傑を招待したが、宴もたけなわというときになって、手下の者たちに命じて大量の銀塊を持ってこさせた。王倫は立ち上がっていった。「みなさんがここまでおこしくださったことには感謝します。ですが、この山寨はみなさんのような大豪傑を入れるにはあまりに小さすぎます。ここに土産の品を用意しましたので、これを持ちになって、どこか別の大きな寨に身を落ちつけてくれるようお願い申しあげます」
 すると晁蓋は、「われわれはこの山寨で広く豪傑を集めていると聞いてやってきたのです。それが無理というなら、われわれはすぐにも退散しましょう。ご親切にも土産の品を用意していただきましたが、それは受け取るわけにはいきません」という。「遠慮しますな。われわれとしてもみなさんに仲間入りして欲しいのは山々なのですが、山寨には食料も乏しく、建物も整っていないのです」と王倫。ところが、この話が終わらぬうちに、林冲が怒りに身体をふるわせ、王倫を怒鳴りつけた。「このやろう。いつもいつも同じことばかりいいやがって、どういうつもりなんだ」。林冲は入山したときから王倫に不満を持ち、晁蓋たちのような本物の豪傑がやってきたのを大いに喜んでいたので、今度もまた王倫が晁蓋たちを追い払うようなことをしたら、ただではすまさぬと心に決めていたのである。しかも、勘のいい呉用は前日から林冲の不満に気がついており、何かあったら林冲に味方しようと晁蓋らと話を決めていた。
 そうとは知らぬ王倫は「口答えするな。上下の分をわきまえろ」と林冲を怒鳴りつけた。すると林冲が机を蹴飛ばし、駆け寄ってきて、懐の刀を抜いて王倫に突き刺した。杜遷、宋万、朱貴は驚いて止めようとしたが、晁蓋や呉用に邪魔され、どうすることもできなかった。
 こうして王倫は林冲に殺され、梁山泊は晁蓋一味に乗っ取られることになったのである。
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 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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