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フランボワイヤン・ワールド
海の冒険者たち
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イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

カリブの海賊・バカニーア
第二章 バカニーアの冒険

4.総勢400人の大海賊船団

 バカニーアの海賊軍団は、通常大きくとも50人~100人程度だった。しかし、カリブ海でも1、2を争うような有名な船長が海賊遠征に出るとなると、数百人のバカニーアたちがいろいろなところから馳せ参じた。

 トルチュガ島を根城にした最大の海賊、フランス人のフランソワ・ロロノアは、ある時400人から成る軍団を引き連れて大遠征を行った。

 1665年、ロロノアは九死に一生を得るという危険を乗り切って、ベネズエラのマラカイボ沖で膨大な金の延べ板と商品を積載したスペイン船を捕獲した。この成功は彼の名声をそれまで以上に高いものにした。
 翌年、彼はもっと多くの戦利品を手に入れたいと考え、再びマラカイボ(★6)を襲う計画をたてた。今度はマラカイボを完全に占領するつもりだった。そのためには多くの部下と船団を必要としたので、彼はカリブ海の海賊たちに呼びかけた。彼の名声に引きつけられ、トルチュガ島ばかりかほかの島々からも勇敢な海賊たちが続々と集まってきた。
 1666年4月、ロロノアは400人の部下、8隻の海賊船団でトルチュガ島を出発した。彼は10門の砲を搭載する、最も大きな船に乗り組んでいた。
 この軍団は、目的のマラカイボに着く以前から大きな獲物を手に入れた。
 船団は、まずエスパニョラ島バヤラで食料を補給し、7月いっぱいそこに滞在した。

 バヤラを出帆後、船団はエスパニョラ島ド・エスパダ岬沖で1隻のスペイン船を発見した。
 ロロノアは、ほかの船を先に行かせ、自分の船だけでそれを捕獲した。
 それは16門の大砲を装備した大型船で大量のカカオナッツ、4万ペソの貨幣、1万ペソの宝石を積んでいた。ロロノアは戦利品をトルチュガ島に荷揚げすると、手に入れたスペイン船に乗って、合流地点であるサナオ島沖に急いだ。
 一方、ロロノアと分かれて合流地点に向かっていた船団も、その途中で8門の砲を持つスペイン船を一隻捕獲していた。その船には1万2千ペソの現金が積まれていたほか、マスケット銃や弾薬も大量に積まれていた。

 1667年5月、船団はマラカイボに近いベネズエラ湾に到着した。
 当時、マラカイボ町にはスペイン総督が派遣した副総督が駐在しており、教会と4つの修道院と病院があり、岸辺にはこざっぱりとした家々が建ち並んでいた。人口は奴隷を含めて約4000人だった。そのうちの800人がスペイン人で、広大なプランテーション(★7)を所有していた。タバコと皮革の輸出で町は大いに栄えていた。
 そのため町の見張りは厳しく、マラカイボに入る水路の入口にあるラスヴィジラス島には、見張りのための城砦があった。イギリス人の海賊たちはこれをウォッチ島と呼んでいた。

 マラカイボを攻撃するロロノアのやり方は残虐なものだった。
 ロロノアはまずウォッチ島の城砦を攻めた。この城砦には砲台も用意されていたが、敵の砲火をものともせずに、海賊たちはピストルと剣だけで壮絶な戦いを繰り広げ、何人かの死者を出しながらも数時間後には城砦を攻略した。
 翌日、海賊たちは再び船に乗り込み、今度はマラカイボに向かった。ウォッチ島の陥落を知ったマラカイボ市民は、ほとんど半狂乱の状態で森の中へ逃げ込んでしまっていた。
 これによりロロノアたちは、いとも簡単にマラカイボを占領することができた。
 しかし、市民たちはめぼしい財産のほとんどを持って逃げていたため、町にはたいしたものは残されていなかった。それでも大量の食料と酒があり、海賊たちはそれで十分に腹ごしらえをすることができた。
 しかし、彼らはそんなことで満足できなかった。そこでロロノアは、敵の襲撃に備えて町全体を要塞化するかたわら、160人の部下を近くの森に派遣し、逃げ出した住民たちを探索させた。夕方、部下たちの手で20人の捕虜と現金2万ペソと多くの財産が運ばれてきた。ロロノアは彼らを拷問し、ほかの宝のありかを聞き出そうとしたが、彼らが答えないのを見ると即座に12人を処刑してしまった。

 ロロノアのマラカイボ襲撃は残虐だったが、見込んでいたほど大きな成果を上げることはできなかった。こうした場合、バカニーアたちは満足できる収穫があるまで近くにある別の町を襲撃するのがふつうだった。ロロノアが目指したのは、マラカイボ湖の奥にあるジブラルタルの町だった。
 ジブラルタルでは、町の守備隊のほかメリダから派遣された400名以上のスペイン兵がロロノアたちを待ち受けていた。しかし、マラカイボ襲撃で成果を上げられなかったロロノアは、ここでも残虐な攻撃を繰り返し、500名以上のスペイン兵を殺して、町中の財産を略奪したのだった。

◆脚注◆
★6 マラカイボ
 ロロノアが襲ったマラカイボは、ベネズエラ湾とマラカイボ湖をつなぐ水路の西側にある町で、スペインのニュー・ベネズエラ植民地に属していた。

★7 プランテーション
 おもに奴隷を使い、タバコ、米、藍などの商品作物を生産する大農園のこと。
カリブの海賊・バカニーア目次
●第一章:カリブ海を荒らしまわるバカニーア|1.カリブ海の無法者2.初期のバカニーアたち3.カリブ海に散らばったバカニーア
●第二章:バカニーアの冒険|1.スペイン船を狙え2.バカニーア時代の初期の船長たち3.バカニーアの掟4.総勢400人の大海賊船団5.バカニーアの悲惨な最期
●第三章:バカニーアの総本山|1.トルチュガ島の時代2.バカニーアの生活3.海賊都市ポート・ロイヤル
●第四章:バカニーアの船|1.バカニーアの船と17世紀の造船術
●第五章:残虐非道のヘンリー・モーガン船長|1.ヘンリー・モーガンの名声2.火船作戦で危機を脱出3.ヘンリー・モーガンのパナマ攻略
●第六章:バカニーア時代の黄昏|1.海賊の時代は終わった2.カリブ海を逃げ出した海賊とパイレーツ
海賊学

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《内容》
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