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フランボワイヤン・ワールド
海の冒険者たち
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。


大航海の時代
第五章 船乗りたちの生活

3.最低レベルの生活条件

■不潔な船内

 船乗りの生活条件は、どう考えても最低の部類に属していた。現代の感覚からすると、船の中は信じられないくらい不潔だった。
 不潔の最大の理由は浸水だった。大航海時代の船はすべて浸水した。そのために「ビルジポンプ」という排水ポンプがついていたが、それでも船底はいつも水浸しだった。船の中には大量の食料が積み込まれていたから、あまり歓迎できない生き物がおおいに繁殖した。ゴキブリ、ねずみ、うじむし、ノミ、シラミがうじゃうじゃしていたのだ。そのうえ個室が用意されているのは船長クラスだけだったから、船乗りたちは汚い甲板にごろ寝しなければならなかった。
 当時の帆船に便所がなかったことも不潔の原因になっていたかもしれない。もちろん、船乗りたちはところかまわず排便したわけではない。排便は、舷側からしりを突き出してするように決まっていた。しかし、そのために船体や甲板が汚れることもあっただろう。
もちろん、当時のヨーロッパの船乗りは不潔・悪臭に慣れていたかもしれないが、たとえ慣れていたとしても、こんな状態では恐ろしい病気が発生しても当然だといえるだろう。

■船上の食生活

 食生活は、人間にとってとても大事なものだが、船上の生活ではいつも十分というわけにはいかなかった。
 当時の航海に準備された食料は次のようなものだった。

 乾燥・塩漬け肉、塩漬け魚、たまねぎ、水、葡萄酒、オリーブ油、酢、豆、ビスケット、小麦粉、チーズ、にんにく、砂糖、蜂蜜、胡椒。

 これらの食料は、基本的に陸上で取っているものと同じだった。しかし、数か月間も陸地に上がらない生活では、何といっても生野菜が不足した。
 その結果、いつのまにか船乗りの食生活は塩漬けにされて保存できるものだけに限られてしまうのである。
 船にもよるが、炊事場がメイン・デッキにあるような場合には、天候によっては火を使えないこともあったという。
 航海が予定通り進まなければ、すべての食料が不足するのは当然だった。陸上と違って、不足しているからといってすぐにどこかから調達するというわけにはいかなかったから、こうした場合、船乗りの食生活は悲惨なものになった。水の不足は雨である程度補うことができたが、どうしても水がない場合には小便を飲む船乗りもいたという。

■壊血病との戦い

 悲惨な食生活は船乗りの中に悲惨な病気を発生させた。
 大航海時代の航海を苦しめた最大の原因は、食料難とそれに伴う壊血病の発生だった。壊血病は全身が痛んで疲労衰弱し、動きがとれなくなり、更に歯茎がはれ上がって口の中にうみがたまり、ものを食べられなくなるという病気だ。
 壊血病は、現在では野菜や果物の接種不足によるビタミンCの欠乏が原因だということが知られている。しかし、当時はどうして壊血病になるのかだれにもわからなかった。そのため、多くの船乗りたちが壊血病で次々と無残に死んでいったのである。
 以下に、最も悲惨な航海といわれるマゼラン船団の例を紹介しよう。
 マゼラン船団の航海は、それまでだれも経験しなかった3年以上という大航海だったため、その状態は一層ひどかった。太平洋横断中にそれは最悪の状態に達した。スペインを出発してからマゼラン海峡を発見して太平洋に出るまでに、彼らはすでに13ヵ月以上を費やし、食料不足と疲労に悩まされていた。それでも船団は、太平洋に突入したのである。

 太平洋上での生活は、見るも無残なものだった。マゼラン海峡を出た1520年11月28日から、翌年3月16日にフィリピンのザマル島に上陸するまで、彼らは新鮮な食べ物どころか、まともなものは何一つとして食べることはできなかった。太平洋上で2つの小さな島を見つけたこともあったが、それらは不毛な無人島であり、食料を補給することはできなかった。
 島陰一つ見えない洋上を進みながら、船乗りたちは食べられるものならどんなものでも食べなければならなかった。虫がわいて粉くずのようになった乾パン、腐って黄色くなった水、帆桁に張りつけた牛の皮、鋸屑などを食べて、彼らは餓えをしのいだ。鼠などは賛沢品で、1匹半ドゥカードの値段がつくほどだった。
 船内には鼠の小便のにおいが充満しており、船員たちは壊血病で次々とたおれ、死んでいった。病人も死体もその辺にごろごろしており、悪臭をまき散らした。

 1521年11月8日、すでにマゼランを亡くしてしまった船団は、モルッカ諸島のティドーレ島に立ち寄っているが、この時まで生きていたのは270名中115名、船は5隻中2隻になっていたという。
大航海の時代目次
●第一章:豊かなるインド//|1.世界で最も盛んな貿易圏2.イスラム商人の時代3.ヨーロッパ世界と東洋
●第二章:航海者たちの迷信//|1.怪物からプレステ・ジョアンの国まで2.ヨーロッパ人の世界地図
●第三章:大洋を越えた航海者たち//|1.イタリア商人の影響2.航海者エンリケ王子3.ポルトガル王の派遣した航海4.西に向かったスペイン
●第四章:カラベル船とキャラック船//|1.大航海時代を可能にしたカラベル船2.キャラック船とサンタ・マリア号3.大航海時代初期の武器
●第五章:船乗りたちの生活//|1.古い船乗りと新しい船乗り2.船乗りたちの日課3.最低レベルの生活条件
●第六章:スペインの繁栄//|1.ポルトガルの衰退2.スペインの繁栄
●第七章:レパントの海戦//|1.オスマン・トルコ2.キリスト教神聖同盟の結成3.最後のガレー船による戦い
大航海時代

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イオの末裔
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 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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