小説
イオの末裔
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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第一章 これだけでわかる錬金術の基礎 |
究極の目的賢者の石
とにかく、賢者の石の話からはじめることにしよう。
錬金術といえば、賢者の石である。錬金術が隆盛を極めた中世ヨーロッパでは、錬金術師たちの誰も彼もが賢者の石を作り出そうとして必死になっていた。この時代には、賢者の石を作ることこそが、錬金術の最大の目的だったのである。
では、どうしてそれほどまでに賢者の石にこだわったのだろう。
その答えは簡単で、賢者の石を手に入れることで、錬金術師のすべての望みが実現すると考えられたからである。
錬金術の目的は基本的には、☆鉛☆{なまり}や鉄などの☆卑金属☆{ひ/きん/ぞく}を黄金に変成{へん/せい}(作り変えること)することである。
だが、ちょっと考えればわかることだが、鉛や鉄が金に変成できるなら、当然のようにほかのこともできるはずだ。
たとえば、そこら辺に転がっている石を宝石に変えることができる。また、アゲート(めのう)、ジャスパー(碧玉)、サファイアなどといった宝石をダイヤモンドに変えることもできる。
言い換えれば、不完全と思えるものを、はるかに素晴らしい完全なものに変えられるということだ。
こんなわけで、古くから錬金術には様々な力があると考えられていた。病気の人間を健康にしたり、老いた人間を若返らせ、不老不死にするというのもそのひとつだ。
とりわけ神秘主義的なある種の錬金術師は、人間の霊を完全なものに変え、神のような存在にすることもできると考えていた。
中世末期のヨーロッパでは、賢者の石があれば姿を消したり、空を飛んだり、魔法使いのように天使に命令できるともいわれた。
こうしたすべてのことが賢者の石によって可能になるのだ。そして、賢者の石がなければ、何ひとつとして実現しないのである。錬金術にとって、賢者の石が何よりも重要視されたのはまったく当然のことといっていいだろう。
不思議なのは、これほど重要な賢者の石が、古い時代の錬金術には存在していなかったということだ。
錬金術において、賢者の石がクローズアップされるようになるのは、およそ12世紀ころのことである。
錬金術は古代エジプトのアレクサンドリアで始まった。その後アラビアにも広まり、そのアラビアから12世紀ごろになってヨーロッパに入り込んだ。
ちょうどこのころから、錬金術師たちは黄金変成には何かきっかけになるものが必要だと考えるようになり、そのきっかけこそ賢者の石だとして、それについての議論が盛んになったのである。
賢者の石というので、その形態は石かその粉末のようだが、最初からそうと決まっていたわけではなく、液体だと考えられることもあった。それで、賢者の石は別名、「エリキサ」「ティンクトラ」などともいわれることがある。エリキサ、ティンクトラは日本語では錬金薬と訳されることが多い。
賢者の石はその名のとおり石だと考える場合にも、様々な意見があった。
まさに石のような硬い物質だという者もいれば、最初から粉末の形で手に入るというものもいた。
賢者の石は光り輝く黄色をしているという意見もあれば、☆芥子☆{ケ/シ}の花の色(赤)だとか、ザクロ石の色(赤)だという意見もあった。まるでオパールのように、白、赤、黄、青、緑色などが内部で統合されているという者もいた。
最も一般的で、多くの錬金術師が認めていたのは、賢者の石はその製造過程で必ず、黒→白→赤という3つの色を経て完成するというものである。それぞれの色の間には緑や黄など様々な色になることもあるが、とにかく黒→白→赤という順番は変わらないという。
すなわち、黒(死と腐敗)を経たあとで、白(再生、復活)が起こり、最後に赤(完成)に至るのである。
このように賢者の石に関しては様々な議論がなされたが、中でも面白いのは、16世紀の錬金術師パラケルススによって主張された「アルカエスト(万物融化液{ばん/ぶつ/ゆう/か/えき})」という液体である。これは、「万物融化液」と訳されているように、すべての物質を溶かしてしまう不思議な液体だ。
後で詳しく説明するが、アリストテレスの四大元素論によれば、すべての物質は第一質料{しつ/りょう}からできている。そこで、アルカエストを使うと、すべての物質を溶かして第一質料に戻してしまうことができる。この結果、黄金変成も可能になるというわけだ。だが、この液体には決定的な欠点があった。
アルカエストはすべてのものを溶かしてしまうので、困ったことにどんな容器にも保存できないのだ。ガラスの容器も石の容器ももちろん駄目である。容器が解ければ、アルカエストは床や地面の上に流れ出てしまうが、当然のように床も地面も解けてしまう。
こんなわけで、アルカエストは錬金術師仲間にはあまり評判がよくなかった。
こうして12世紀以降は、賢者の石を手に入れることこそが、錬金術の最大の目的とされるようになったのだ。
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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