ようこそ。ここは草野巧のホームページです。
フランボワイヤン・ワールド
錬金術師の話
フランボワイヤン・ワールド・トップ||錬金術師の話目次錬金術ミニ事典
 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。



第二章 一世を風靡した錬金術師の活躍

誰にもいえない職業上の苦労 *トマス・チャーノック


 古くから、錬金術師たちは、自分が錬金術師だということを他人に知られないように注意する必要があった。中世のヨーロッパでは、無知な一般の人々の多くが、錬金術師といえば魔法使いの仲間か、さもなくばペテン師だと考えていた。賢者の石を手に入れ、金属変成に成功したという噂が立てば、欲深い権力者に捕えられ、秘密を明かすか、さもなくば☆拷問☆{ごう/もん}にかけられたり、牢獄に閉じ込められる危険もあった。
 とはいえ、錬金術師という職業を隠すのは大変なことだった。
 どんな風に大変だったのか? そのあたりの事情をトマス・チャーノックという錬金術師が伝えている。
 
 トマス・チャーノックは1520年代、ケント州生まれのイギリス人で、20歳かそこらで錬金術に興味を覚え、優れた師を求めてイギリス全土を旅したという。
 28歳のときソールズベリーの司祭で、熟達した錬金術師でもあった「J.S」という頭文字の人物と出会い、彼の持つ錬金術の秘密を教わった。
 その後、チャーノックはバスの修道院長ホールウェイからも、錬金術の秘密を教わった。ホールウェイは真に優れた錬金術師で、実際に賢者の石の創造に成功したという伝説のある人物である。
 秘密を手にしたチャーノックはすぐにも自分自身で金属変成の仕事に取り掛かった。
 いろいろな失敗はあったものの、彼はそれを乗り越え、やがてもうすぐ賢者の石が得られるという段階まで達した。ところがそのときになって、彼は軍隊に召集され、カレー防衛戦(1557~58)に派遣されることになってしまった。
 貧乏だったチャーノックはお金で召集を逃れることもできなかった。
 これに腹を立てたチャーノックは、金属変成に必要な様々な装置を滅茶苦茶に壊してしまった。
 カレー防衛戦から帰還したチャーノックはふたたび錬金術に取り組んだ。だが、ついに賢者の石を手に入れることはできず、およそ20年後の1581年、彼は死んだのである。

 こんなわけなので、錬金術師とはいっても、チャーノックはけっして達人ではない。
 にもかかわらず、彼が有名な錬金術師として現代でもよく知られているのは、彼が錬金術師に関する興味深い詩を書き残したからだ。そして、この詩の中で、彼は錬金術師という職業を隠すことの困難さを語っているのである。
 伝えられているところによれば、そこで語られているのは次のようなことだという。

 当然のことだが、錬金術の仕事をするためには様々な設備や器具が必要になる。

 これらの器具は、中世のヨーロッパではなかなか手に入らないものが多かった。たとえばガラスの容器。現在では簡単に手に入るが、中世ヨーロッパではそうはいかなかったし、チャーノックの住むイギリスにはガラス職人などほとんどいなかった。
 そこで、錬金術師はわざわざ職人に頼んで専用の器具を作ってもらう必要があったが、なんといっても特別な用途に使うもので、職人でさえ見たことがないようなものも含まれていた。そうなると、これは一体何に使う器具なのか、職人たちも大いに興味をそそられた。だが、正直に答えたのでは、錬金術師だとばれてしまう。そこで錬金術師はいろいろ嘘を考えて言い訳するのだという。「じつは最近父親が目をわずらっており、それを治療するのに、水を蒸留する必要があるのだよ」といった具合だ。
 大切な器具をしまっておくための、鍵付きの頑丈な木製の箱を作ってもらおうとすれば、指物師に向かい、「じつは☆狐☆{キツネ}を飼っており、誰にも見つからないように隠しておかなければならないのだよ」と、いかにも冗談めかしていわなければならないのだ。

 こうした困難は、おそらくチャーノック自身が経験したことなのだろうが、けっしてチャーノックだけが経験したことではないはずだ。
 中世ヨーロッパの数多くの錬金術師たちが、あちこちで、毎日のようにこんな言い訳をしていたに違いなのである。
 とすると、錬金術師というのは、いまから見れば、かなりユーモラスな存在だったのかもしれない。 
 錬金術師の話 目次
 第一章 これだけでわかる錬金術の基礎

究極の目的―賢者の石
古代の神話や信仰にはぐくまれた錬金術
黄金変成を保証する四大元素の理論
錬金術の三種の神器――硫黄、水銀、塩

第二章 一世を風靡した錬金術師の活躍

錬金術の始祖とエメラルド板 *ヘルメス・トリスメギストス
黄金と不死を手にした最も幸福な男 *ニコラ・フラメル
コスモポリタンと呼ばれた快男児 *アレクサンダー・セトン
他人が作った賢者の石で名を上げた男 *ミカエル・センディヴォギウス
失敗に失敗を重ねた苦労人 *ドニ・ザシェール
誰にもいえない職業上の苦労 * トマス・チャーノック
オリーブ油を万能薬に変える奇跡 *ファン・ヘルモント
〝死ねない男〟といわれた奇跡の怪人物 *サン・ジェルマン伯爵
一世を風靡した大ペテン師!? *アレッサンドロ・カリオストロ伯爵
歴史から消された悪魔の友 *ヨーハン・ゲオルク・ファウスト博士
医師としても業績を残した革新児 *パラケルスス

第三章 伝説や物語に見る錬金術の魅力

見果てぬ夢を追うための嘘 *メレシコーフスキー『レオナルド・ダ・ヴィンチ』
不老不死薬の実験台にされた娘 *チャペック『マクロプロス事件』
人造人間ホムンクルスの冒険 *ゲーテ『ファウスト』
人造人間ゴーレムと言葉の錬金術 *ユダヤの伝承
600年の呪いを生きた魔道師の物語 *ラヴクラフト『錬金術師』

第四章 薔薇十字団の錬金術

秘密結社・薔薇十字団と錬金術
薔薇十字団を創設した伝説的錬金術師 *クリスチャン・ローゼンクロイツ
ホムンクルス製造の物語 *ヴァレンティン・アンドレーエ『化学の結婚』

ブログ案内
小説『イオの末裔』〔Kindle版〕の販売に合わせて、同タイトルのブログ「イオの末裔」を始めました。よろしくお願いします。
 

知っていますか?
Kindle版の本は無料のKindleアプリを入手すれば、iPhone、iPadや各種のAndroid端末、及びMac、Windowsなどのパソコンでも読むことができます。

 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

Copyright(C) 草野巧 All Right Reserved