小説
イオの末裔
〔Kindle版〕
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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| 第三章 伝説や物語に見る錬金術の魅力 |
人造人間ホムンクルスの冒険 ＊ゲーテ『ファウスト』
ゲーテの『ファウスト』（１８０８～32）といえば世界文学の最高峰ともいえる傑作である。
この大傑作の第二部に、ホムンクルスという、錬金術によって作り出された人造人間が登場する。
錬金術の目的は、もちろん賢者の石を作ることであり、それによって☆卑金属☆｛ひ/きん/ぞく｝を黄金に変成したり、不老不死を手に入れることである。
だが、錬金術師の中には、様々な物質を変成することで、人間を作り出せると考える者もいた。これがホムンクルスと呼ばれる人造人間である。
まず初めに、どうしてそんなことが可能なのかということを解説しておこう。
ホムンクルスについて語った錬金術師の中では、ルネサンス時代に活躍したスイスの医師パラケルスス（１４９３～１５４１。）が特に有名である。
パラケルススは錬金術師であったが、それ以上に医師であり、錬金術を医療に応用しようとしたことで知られている。錬金術師として、彼もまた賢者の石によって卑金属を黄金に変えたり、不老不死を手に入れることは可能だと考えていた。だが、他の錬金術師のようにそのことに執着してはいなかった。賢者の石を手に入れることはあまりに困難なので、それよりはもっと現実的になって、錬金術によって人々の☆病☆｛やまい｝を治そうと考えたのである。
パラケルススの考えでは、世界＝大宇宙（マクロコスモス）と人間＝小宇宙（ミクロコスモス）は完全に対応する関係にあり、まったく同じ構成を持っていた。錬金術師たちの多くは、世界は☆硫黄☆｛い/おう｝、☆水銀☆｛すい/ぎん｝、塩の三原質から作られると考えていたが、パラケルススによれば、それは人間も同じで、人間の場合、三原質は霊魂、精神、肉体の形で現われるとされた。硫黄、水銀、塩に対応する霊魂、精神、肉体という三要素の微妙なバランスの上に、人間は成り立っているのである。したがって、この世にある物質から化学的方法によって製造された薬品によって、人間の病が癒されるのはまったく当然のことなのである。
ホムンクルスが作られるのも、まったく同じ理屈から説明できる。世界と人間がまったく同じ物質からできているならば、その物質から化学的方法で人間を作ることも可能でないはずがないのである。
では、どのようにして作るのか。パラケルススによれば、最初に必要なのは人間の精液である。精液が手に入ったら、これを蒸留器に入れて40日間密封し、腐敗させる。すると、蒸留器の中に人間の形をした透明な生命が誕生する。しかし、このままではまだ人間にはならない。注意が必要なのはこれからで、この生命は毎日人間の血で養い、40週間馬の体内と同じ温度で保存する必要がある。これをうまくやると、最初透明だったものは、立派な人間の子供になるのである。違っているのは、普通の子供よりずっと小さいことだけだという。
このような考えは確かに突拍子もないものなので、現実の錬金術師の伝説には、ホムンクルスの製造に成功したという話は見当たらない。だが、ホムンクルス伝説は民間伝承に取り入れられ、とりわけドイツで人気が高かったといわれている。ゲーテはドイツ人だから、当然ホムンクルスの民間伝承を知っていたはずで、『ファウスト』に登場するホムンクルスにもドイツの民間伝承の中で活躍するホムンクルスの姿が反映しているといっていいだろう。
では、『ファウスト』に登場するホムンクルスを見てみることにしよう。
『ファウスト』の中で、ホムンクルスが登場するのは第二部第二幕「実験室」である。
この実験室は、かつてファウスト博士自身が長年の間、研究を続けた場所である。ここで、老年だったファウスト博士は悪魔メフィストフェレスと出会い、魔女の☆厨☆｛くりや｝に連れて行かれ、秘薬を飲んで若返る。そして、町に出て、純情可憐な美少女マルガレーテに恋をする。だが、この結果は恐ろしいもので、マルガレーテはファウストとの間に生まれた赤ん坊を殺すだけでなく、母までも睡眠薬で殺してしまい、最後には処刑されてしまう。このため、ファウストは深く傷つくことになる。
これが『ファウスト』第一部のストーリーだが、第二部に入るとファウストは一転して神聖ローマ帝国皇帝に仕える身になり、新しい冒険に乗り出すことになる。この冒険のひとつに、古代ギリシア最大の美女ヘレネとの結婚がある。この冒険に乗り出す前に、ファウストとメフィストフェレスは、かつてのファウストの実験室を訪れるのである。
こうして２人がやってくると、実験室にヴァーグナーがいる。
ヴァーグナーはかつてファウスト博士の助手をしていた男で、第一部ではいかにもぱっとしない、現実主義的な学生として登場している。
それがどういうわけか、第二部ではかつてのファウスト博士をもしのぐほどの大学者になっており、いままさにホムンクルスの製造に成功するところなのである。
ヴァーグナーはいう。
「光っている！ 見なさい！ ――こんどこそほんとに見こみがある。
数百の物質を調合して、
何せ、この調合が重大なんですがね、
人間の原素を穏やかに組み立て、
蒸留器に入れて密封し
適当に蒸留すると、
仕事は隠密のうちにかたづくのです。」（高橋健二訳より、以下引用はすべて同じ）
そして、本当にフラスコの中に小さな人造人間ホムンクルスが誕生するのだ。
驚くことにホムンクルスは生まれるとすぐからぺらぺらとしゃべり始める。
「さて、おとうさん、いかがです？ あれは冗談じゃありませんでしたね。
さあ、ぼくをぎゅっと胸に抱きしめてください。
でも、あんまり強くなく、ガラスが割れるといけないから。」
ここで、ホムンクルスが「（フラスコの）ガラスが割れるといけないから」といっていることに注意しよう。
パラケルススの考えでは、ホムンクルスは体が小さいということのほかは、人間の子供と少しも違わない完全な存在だとされている。しかし、『ファウスト』に登場するホムンクルスは違っている。多分、ドイツの民間伝承の影響なのだろう、このホムンクルスは高貴な精神を持ってはいるが、肉体は不完全であり、フラスコの外に出ることができないのである。
『ファウスト』に登場するホムンクルスはそのことをよく知っており、どうにかして自分の肉体を完全なものにしたいと強く望んでいる。そこで、その望みを達成するため、ファウストやメフィストフェレスとともに冒険の旅に出るのである。行き先は、世界一の美女ヘレネが住む古典的ギリシア世界である。
それにしても、フラスコから外に出れないホムンクルスはどうやって冒険の旅に出るのか？ 実はこのホムンクルスはフラスコごと自由自在に空を飛びまわることができるのだ。ホムンクルスの身体は光っているので、その様子はまるで空飛ぶランプのような感じである。
さて、こうしていよいよホムンクルスの冒険が始まるわけだが、それは神秘的で美しく、そしてはかない物語である。
古典的ギリシア世界へやってきたホムンクルスは他の２人と別れ、自分自身の目的を達成するために飛び回る。だが、肉体を完成させる方法はなかなか見つからない。
「私はこうやって、あちこち飛びまわってるの。
ほんとの意味でできあがりたいと思って、
このガラスを割るためにあせってるの。
しかしこれまで見たところでは、
思い切って飛び込みたい所はありません。
ただ、あなたに内証で言うんですけど、
ふたりの哲学者のあとをつけてるんです。
耳をすますと、自然！ 自然！ と言ってました。
このふたりからわたしは離れようと思いません。
彼らは地上の存在のことを知ってるはずですから。
私もしまいには、どこへたよったら、
一ばん賢明であるかが、わかるでしょう。」
ホムンクルスがいっている２人の哲学者とは、古代ギリシアの大哲学者アナクサゴラス（前５００～４２８）とターレス（前６３９～５４６）である。アナクサゴラスはこの世の物質の根源は火であるという火成論、ターレスは物質の根源は水であるという水成論を説いたことで知られている。
ホムンクルスはこの２人の議論を聞くうちにターレスに魅力を感じ、ターレスとともに月夜のエーゲ海へ向かった。
エーゲ海では海に住む神々や女神、妖精、怪物たちが美しい声で歌っている。
ここで、ホムンクルスは海神プロテウスと出会い、ターレス、プロテウスとともにさらに海の上を進んでいった。
あたりの光景はあまりに美しく、ホムンクルスはいよいよ海の魅力に引き付けられる。
そのうち、ロードス島から優美の女神ガラテアが貝殻の車に乗り、それを無数のイルカに引かせてやってくる。
これを見たホムンクルスはその美しさに、いまや完全に我を忘れてしまう。
これがいけなかった。ホムンクルスは夢中になってガラテアの回りを飛び回るうち、うかつにも輝く貝殻の玉座にぶつかってしまうのだ。
フラスコのガラスが砕けた。その瞬間、ホムンクルスの肉体はしゅっと炎を上げて燃え上がり、一瞬のうちに消え去ってしまったのである。
錬金術から生まれる人造人間ホムンクルスは光り輝く美しさを持っているが、まるでカゲロウのようにはかない存在なのである。
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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