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錬金術師の話
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

第四章 薔薇十字団の錬金術

秘密結社・薔薇十字団と錬金術


 アラビアからヨーロッパへ伝えられた錬金術は、14~16世紀ころのルネサンスの時代に、きわめて魔術的な宇宙観と結びつくことで、たんなる黄金変成の術ではなくなった。錬金術は、ただたんに☆鉛☆{なまり}や鉄などを黄金に変える術ではなく、不完全な人間を神のような完全な存在に作りかえる神聖な術と考えられるようになった。
 さらに17世紀になると、錬金術は当時のヨーロッパ人を悩ませていた様々な政治的・宗教的問題までも解決できるほど、重大な術だと考えられるようになったのである。
 この動きをリードしたのが☆薔薇十字団☆{ば/ら/じゅう/じ/だん}だった。

 一説によると、薔薇十字団は1600年ころに結成された秘密結社だという。もちろん、正確なところはわからない。薔薇十字団は秘密結社であり、団に関する事柄は、部外者にはけっして☆漏☆{も}らさないという☆掟☆{おきて}があったからだ。
 だが、1610年代になって、事情が変わった。なぜだかわからないが、薔薇十字団員か、あるいはその周辺にいた人々の手で、薔薇十字団の存在を公然と明らかにする4つの基本文書が発表されたのである。
 これら4つの基本文書はどれもドイツで刊行されたもので、1614年の『全世界の普遍的改革』ならびにその付録の『薔薇十字団の伝説(ファーマ・フラテルニタティス)』、15年に刊行された『薔薇十字団の告白(コンフェッシオ・フラテルニタティス)』、16年に刊行された錬金術的☆寓意☆{ぐう/い}小説『化学の結婚』があった。
 こうして薔薇十字団の思想が明らかにされると、それはドイツだけでなく、全ヨーロッパに熱狂を巻き起こした。薔薇十字団は秘密結社だったので、当時の人々はどこに薔薇十字団があるのか、誰が薔薇十字団員なのかまったく知らなかった。にもかかわらず、当時の多くの人々が、薔薇十字団の思想への共鳴と、自分もまた薔薇十字団に加わりたいという意思を表明したのである。

 この薔薇十字団の思想の中心にあるのが錬金術だった。
 薔薇十字団の目的は、「完全にして普遍的な知識」を手に入れることにあった。そのためには錬金術が不可欠な手段とされたのである。
 なぜなら、薔薇十字団の考えでは、神による天地創造も錬金術的な過程だと考えられたからだ。だから、錬金術を極めることは、同時に宇宙の神秘を極め、「完全にして普遍的な知識」を手に入れることにつながった。そして、このような知識を手に入れることで、人間は完全な存在として神の世に参加できると考えられたのである。
 したがって、薔薇十字団の錬金術にとっても、黄金製造は錬金術の主要な目的ではなかった。現実的には、薔薇十字団員は万病薬の探求に熱中した。それによって、まるで福音書で語られるイエスのように、無料で人々の治療にあたることを、自分たちの責務だと考え、最終的には社会そのものの変革を目指した。

 興味深いのは、このようにきわめて錬金術的な思想が、当時のヨーロッパだけでなく、後の時代にも大きな影響を与えたということだ。たとえば、18世紀のフランス革命の中にさえ、薔薇十字的な思想は生きているのである。
 とはいえ、薔薇十字団についてのくわしい解説や、それが後世に及ぼした影響について語ることは、本書の目的からはずれてしまう。
 そこで、薔薇十字団の錬金術に関しても、これまでと同じように、薔薇十字団に不可欠の錬金術師と錬金術の物語を紹介していくことにしよう。 
 錬金術師の話 目次
 第一章 これだけでわかる錬金術の基礎

究極の目的―賢者の石
古代の神話や信仰にはぐくまれた錬金術
黄金変成を保証する四大元素の理論
錬金術の三種の神器――硫黄、水銀、塩

第二章 一世を風靡した錬金術師の活躍

錬金術の始祖とエメラルド板 *ヘルメス・トリスメギストス
黄金と不死を手にした最も幸福な男 *ニコラ・フラメル
コスモポリタンと呼ばれた快男児 *アレクサンダー・セトン
他人が作った賢者の石で名を上げた男 *ミカエル・センディヴォギウス
失敗に失敗を重ねた苦労人 *ドニ・ザシェール
誰にもいえない職業上の苦労 * トマス・チャーノック
オリーブ油を万能薬に変える奇跡 *ファン・ヘルモント
〝死ねない男〟といわれた奇跡の怪人物 *サン・ジェルマン伯爵
一世を風靡した大ペテン師!? *アレッサンドロ・カリオストロ伯爵
歴史から消された悪魔の友 *ヨーハン・ゲオルク・ファウスト博士
医師としても業績を残した革新児 *パラケルスス

第三章 伝説や物語に見る錬金術の魅力

見果てぬ夢を追うための嘘 *メレシコーフスキー『レオナルド・ダ・ヴィンチ』
不老不死薬の実験台にされた娘 *チャペック『マクロプロス事件』
人造人間ホムンクルスの冒険 *ゲーテ『ファウスト』
人造人間ゴーレムと言葉の錬金術 *ユダヤの伝承
600年の呪いを生きた魔道師の物語 *ラヴクラフト『錬金術師』

第四章 薔薇十字団の錬金術

秘密結社・薔薇十字団と錬金術
薔薇十字団を創設した伝説的錬金術師 *クリスチャン・ローゼンクロイツ
ホムンクルス製造の物語 *ヴァレンティン・アンドレーエ『化学の結婚』

ブログ案内
小説『イオの末裔』〔Kindle版〕の販売に合わせて、同タイトルのブログ「イオの末裔」を始めました。よろしくお願いします。
 

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《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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