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フランボワイヤン・ワールド
錬金術師の話
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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イオの末裔
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第二章 一世を風靡した錬金術師の活躍

黄金と不死を手にした最も幸福な男 *ニコラ・フラメル


 錬金術に興味を持っている、いないに関わらず、ニコラ・フラメル(英語読みでは、ニコラス・フラメル)の名だけは、どこかで聞いたことがある人が多いだろう。
 大ベストセラーとなった小説『ハリー・ポッターと賢者の石』の中で、ホグワーツ魔法学院に保管されていた賢者の石を作ったとされている錬金術師である。
 作者J.K.ローリングが、自らの小説の中で重要な意味を持つ賢者の石の作り手として、数多い錬金術師の中から選んだほどだから、もちろん有名な錬金術師である。実在の錬金術師の中で一番有名といってもいいだろう。
 ある意味理想の錬金術師だったフラメルは後世の錬金術師の☆憧{あこが}☆れでもあった。
 ニコラ・フラメルは1330年生まれ、表向きは1418年に死んだとされているが、その死から300年以上も後の18世紀になっても、フラメルがパリで住んでいた家は、錬金術師たちの巡礼地のようになっていた。

 何とかして〝賢者の石〟を手に入れたいと思った錬金術師たちの中には、フラメルの家に忍び込み、あちこち掘り返すものも多かったので、その家は間もなく荒れ果ててしまったほどである。

 フラメルが後世の錬金術師たちからこれほどに崇敬されたのは、彼が賢者の石の創造に成功し、黄金と不老不死を手に入れたからであることはもちろんだが、ただそれだけが理由ではない。賢者の石を手に入れた錬金術師は、もしそれを他人に知られれば、秘密を知ろうとする人間たちに捕えられて☆拷問☆{ごう/もん}されたり、殺されることさえあった。だが、フラメルはそうはならなかった。
 優れた錬金術の達人は、決して人からは錬金術師とは思われず、ただ同じような達人にだけそうとわかる、といわれる。フラメルはまさにこのような達人として、黄金と不死を手に入れた後も、数百年にわたって、もしかしたら現在までも、幸せな生活を続けているといわれているのだ。
 後世の錬金術師たちが彼に憧れたのは、こうした彼の暮らし方の中に、錬金術師の理想を見たからといっていいはずである。

 ニコラ・フラメルはパリの人で、本来の職業は写字生兼書籍販売人{しゃ/じ/せい/けん/しょ/せき/はん/ばい/にん}だった。〝写字生兼書籍販売人〟というのは証書、財産目録、遺言書、書簡、貴重な書物などを美しい文字で筆写し、必要に応じて製本して販売する職業で、印刷機が存在しなかった当時としてはブルジョワに属する職業といってよかった。したがって、彼はもともと貧乏人というわけではなかったが、だからといって金持ちでもなかった。
 そんなあるとき、彼は一冊の本を手に入れた。☆金箔塗☆{きん/ぱく/ぬ}りの非常に古い大型本で、それぞれのページは当時一般的だった紙や☆羊皮紙☆{よう/ひ/し}ではなく、柔らかな若木の樹皮を薄く打ち延ばしたものでできていた。また、表紙は薄い銅板で、彼がまだ見たこともないような文字のような図像のようなものが☆彫☆{ほ}ってあった。
 もちろん、この書物こそ〝賢者の石〟の製造方法を伝える貴重な錬金術論文だったわけだが、そこに書かれていることを正確に読み取るのは大変なことだった。第一に、そこに書かれている言葉はフラメルの知らないヘブライ語だった。第二に、そこには様々な図が描かれていたが、それはすべて☆寓意図☆{ぐう/い/ず}だった。
 寓意図というのは、たとえば☆雄☆{オス}と☆雌☆{メス}の二匹の竜が描かれていた場合には、それぞれが☆硫黄☆{い/おう}(空気と火)と☆水銀☆{すい/ぎん}(水と土)を表すというように、特別な変換規則に従うことで、正しい意味が伝わるように作られた図のことである。とはいえ、それが錬金術の書であることを見抜いたフラメルは、妻ペルネルと一緒にその解読方法を考え始めた。

 ここでフラメルにとって運がよかったのは、彼の職業柄、ヘブライ語が読めるユダヤ人のラビ(教師)に数多くの友人がいたことである。彼はそういう友人を訪ねては、少しずつ論文のヘブライ語を翻訳してもらった。決して、1人の人間に論文の多くの部分を見せるようなことはしなかった。さらに、彼はスペインにも旅した。当時スペインには数多くのユダヤ人が住んでいたからだ。

 こうやって、彼は錬金術論文を読み解くと、それに従って〝賢者の石〟の製造を開始した。おそらく、水銀や硫黄のほかにも様々な金属を☆炉☆{ろ}の火で☆溶融☆{よう/ゆう}したり、蒸留したりしたのだろう。
 作業を進めるうち、目的の物質は黒色、灰白色、緑色、白色、オレンジ色と変化し、ついに☆芥子☆{ケ/シ}の花のような赤色の石になった。〝賢者の石〟が完成したのである。
 1382年1月17日の昼ごろ、彼は〝賢者の石〟による黄金作りに取り掛かった。彼は妻の見ている前で水銀の中に同量の〝賢者の石〟を投げ込んだ。すると、ただそれだけで水銀と同量の黄金が出来上がったのである。その夜も、彼は同じことを繰り返した。彼自身の告白によれば、彼は全部で三度、〝賢者の石〟を使って水銀を黄金に変えたという。そして、これだけで十分だった。彼はあっという間に大金持ちになった。
 現実に、彼はパリに14の病院と3つの礼拝堂と7つの教会を設立したうえ、基金に寄付するという慈善事業まで行ったことで知られているが、この金は錬金術によって得られたものだといわれているのだ。

 賢者の石を手に入れたフラメル夫妻は、それによって黄金のほかに不老不死も手に入れたことはいうまでもない。
 だが、2人は人々から気づかれないように細心の注意を払った。
 フラメルは大金を慈善事業に使った後も、普段の暮らしはできる限り質素になるように努力したし、何事もなかったようにそれまでどおりの暮らしを続けた。
 とはいえ、これで迫害される怖れが完全になくなったとはいえなかった。そこで、最終的には夫婦ともに死んだふりをして、外国に逃れて暮らすことに決めたのである。
 まず、彼の妻が病気になったふりをし、やがて死んでしまったことにして葬式を行った。棺にはただの木片と彼女の服を入れて埋葬した。この間に、彼女は変装してパリを脱出し、スイスで夫の命令を待っていた。
 それからだいぶたって、今度はフラメルが同じ計略を実行した。彼には金があったし、彼のために尽くす親しい友人もいたので、この計略もうまくいった。こうして、彼は外国で妻と落ち合うと、それからは2人して国から国へと渡り歩きながら、信じられないほど長い生涯を幸せに暮らしたのである。

 ところで、フラメルの死後、彼が生前に住んでいた家が錬金術師の☆巡礼地☆{じゅん/れい/ち}のようになったことは最初に述べたが、賢者の石の秘密を探しにこの家にやってきた錬金術師たちの誰も、片隅にあった1つの☆小瓶☆{こ/びん}にだけは気がつかなかったと伝えられている。
 あるとき、1人の無知な女がこの家にやってきて、それを見つけ、家に持ち帰った。表面は土やほこりで汚れ、内側にはクモの巣がはっていたが、よく見るとその中に何かの赤い粉末があった。だが、彼女はそれが何であり、どんなに価値のあるものか知らなかった。
 彼女はクモの巣を払い、小瓶を磨くと、中身の粉末を水で洗い流してしまったのである。

 こうして、この世の初めから人類が探し求めていた魔法の薬が、水とともに完全に失われてしまったのだという。
 錬金術師の話 目次
 第一章 これだけでわかる錬金術の基礎

究極の目的―賢者の石
古代の神話や信仰にはぐくまれた錬金術
黄金変成を保証する四大元素の理論
錬金術の三種の神器――硫黄、水銀、塩

第二章 一世を風靡した錬金術師の活躍

錬金術の始祖とエメラルド板 *ヘルメス・トリスメギストス
黄金と不死を手にした最も幸福な男 *ニコラ・フラメル
コスモポリタンと呼ばれた快男児 *アレクサンダー・セトン
他人が作った賢者の石で名を上げた男 *ミカエル・センディヴォギウス
失敗に失敗を重ねた苦労人 *ドニ・ザシェール
誰にもいえない職業上の苦労 * トマス・チャーノック
オリーブ油を万能薬に変える奇跡 *ファン・ヘルモント
〝死ねない男〟といわれた奇跡の怪人物 *サン・ジェルマン伯爵
一世を風靡した大ペテン師!? *アレッサンドロ・カリオストロ伯爵
歴史から消された悪魔の友 *ヨーハン・ゲオルク・ファウスト博士
医師としても業績を残した革新児 *パラケルスス

第三章 伝説や物語に見る錬金術の魅力

見果てぬ夢を追うための嘘 *メレシコーフスキー『レオナルド・ダ・ヴィンチ』
不老不死薬の実験台にされた娘 *チャペック『マクロプロス事件』
人造人間ホムンクルスの冒険 *ゲーテ『ファウスト』
人造人間ゴーレムと言葉の錬金術 *ユダヤの伝承
600年の呪いを生きた魔道師の物語 *ラヴクラフト『錬金術師』

第四章 薔薇十字団の錬金術

秘密結社・薔薇十字団と錬金術
薔薇十字団を創設した伝説的錬金術師 *クリスチャン・ローゼンクロイツ
ホムンクルス製造の物語 *ヴァレンティン・アンドレーエ『化学の結婚』

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小説『イオの末裔』〔Kindle版〕の販売に合わせて、同タイトルのブログ「イオの末裔」を始めました。よろしくお願いします。
 

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 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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