小説
イオの末裔
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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| 第２章 目的別幻想都市計画論 |
サンプル商業都市プリステンダム |
２ 商業都市の立地条件と形態
■商業都市の立地条件
ファンタジーに限らず、商業都市は繁栄しているほうがおもしろい。
繁栄している商業都市には、いろいろな国から、数多くの人間か集まってくる。うさんくさい人間も数多くやってくる。街中がにぎやかで、ごちゃごちゃしていて、意外な事件の可能性に満ちている。大海賊軍団や大盗賊軍団が攻撃目標とするのも、だいたいが繁栄した商業都市だろう。
しかし、商業都市か繁栄するかどうかは、かなりの部分、立地条件によって左右される。作品に登場させる場合も、これをまちがえると、どうして繁栄しているのか、さっぱりわからないような奇妙な商業都市ができあがってしまう。
では、商業都市が繁栄するにふさわしい立地条件とはどんなものだろうか？ 具体的には、次の２つである。
① 交通の便がよい
② 外敵の攻撃から安全な場所である
サンプル都市プリステンダムの場合を見てみよう。
プリステンダムの立地概略図 |
この都市は河口に位置している。しかも、この河口全体は直接、海に面しているわけではない。上の地図でもわかるように入江の中にある。それは海につながる巨大な湖のようなものである。
これは、商業都市として理想に近い立地場所といってよい。船が利用できるというのが最大の利点だ。船は少数の人間で操れ、大量の荷物を載せることができる。そのため、陸路輸送よりも輸送コストが安いのだ。また、入江の中にあるということは、海賊たちの襲撃からもある程度安全である。海賊がせめてくる方角は入江の入口だけだから、その辺りを重点的に警備すればよい。万が一、海賊が侵入してきてもすぐに発見でき、船着き場の船を木柵の中に避難することができる。
もちろん、すべての商業都市か、理想の立地場所に建てられているわけではない。そのため商業都市では、立地場所に合わせて、理想の条件に近付ける努力を行うことも必要だ。
商業都市を立地場所で分類すると、だいたい次のようになる。
▼チェックリスト ≪商業都市の立地場所≫
| 都市タイプ |
立地場所 |
意味 |
| 水運型 |
海洋都市 |
海に直接面している |
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出島都市 |
海の中に出島が作られている |
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河口都市 |
河川が海に流れ出る場所にある |
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運河都市 |
人工的な運河を港にしている |
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内陸河畔都市 |
河川を内陸部に遡った場所にある |
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防波堤(堤防)都市 |
人工的な防波堤(提防)を利用している |
| 陸運型 |
街道都市 |
大きな街道の沿道や交差点付近にある |
ここで、これらの立地場所ごとに、どのような形態の都市を作ればよいか紹介しよう。
■水運型の商業都市
水運型都市というのは、物資の運搬を基本的に船舶に頼っているような商業都市のことである。このような商業都市は数多い。商業都市のほとんどは、船舶を利用する水運都市だといってもいい過ぎではないくらいだ。
というわけで、都市の海上防御についてはここで取り扱う。これは、２-１の軍事都市の所で述べた都市の軍事的要素と同じく、商業都市を含めた、すべての水運型都市に当てはまる要素として読んでほしい。
○海洋都市
海洋都市とは海に面した商業都市のことだ。このタイプの都市は、まつすぐな海岸線にあるか、入江の中にあるかで、安全性の面で大きな違いか出てくる。
①ビスケー型
まっすぐな海岸線があり、そこから先はすべて海というような場所に、商業都市かできる可能性は極めて少ない。そのような場所は、一見便利そうに見えるが、あまりにも無防備であって、商業都市の立地条件としてはそれほど良好とはいえない。このような都市の場合には、人工的な防御施設を充実させる必要がある。
図はその一例だ。港の周囲の海上を、クワガタのハサミのように、防波堤や木柵で囲い込んでいる。
ビスケー型 |
②マルセイユ型
都市そのものは海に面していても、港の部分だけでも陸地の中に深く切れ込んだ入江の中にあれば、海に面した部分は城壁で防御し、入江の入口に稜堡を築くことで、港の船舶を守ることかできる。
マルセイユ型 |
③アムステルダム型
海が陸地の中に深く入り込んでいるような入江の中とか、大海と陸地の間に、たくさんの小さな島が浮かんでいるような場所は、船舶の出入りに多少の不便はあるといっても、自然の防御施設を持つという点で、非常に良好な商業都市の立地条件といえるだろう。
アムステルダム型 |
④ヴェネチア型
細長い半島と、大陸に囲まれた入江に浮かぶ島のような場所は、大陸からも海からも守られているので、立地条件としては最高だといってよい。
ヴェネチア型 |
○出島都市
出島都市は海洋都市の一種といえるだろう。これは、大陸部分に接近した小さな島や埋立地を商業都市としたもので、大陸部分とは橋や防波堤などでつながっている。
このような商業都市の利点は、大陸側から攻めてくるような外敵に対して、非常に強いということだ。紅海のアフリカ側にあった、イスラムの貿易都市サワーキンなどは、この好例といっていい。
サワーキンは円形の島で、大陸部とは防波堤でつながっていた。そこには貿易に必要な倉庫や税関などがそろっていて、外国からきた航海者たちはその島だけで必要を満たすことができた。
これに対して、日本の江戸時代の長崎の出島などは、外国商人を隔離しておくのに役立った。商品はほしいけれども、宗教的な影響は受けたくない、といった場合に、最適の都市形態といえるだろう。
サワーキン型 |
○河口都市
大きな河が海へと注ぎ込む河口の付近は、商業都市の立地場所としては、最高に近い条件を備えているといえるだろう。そこには、海から接近することもできるし、そこから河を遡って、船を利用して内陸都市へ向かうこともできる。プリステンダムのように、河口自体が大きな入江の中にあれば、自然の防御という点でも理想的である。
河ロが複雑に入り組んでおり、数多くの中洲が存在する場合、河川や中洲を理想の形に埋め立てることで、河口全体を商業都市として有効に利用することかできるだろう。
ハンブルク型 |
○河畔都市
内陸部にあっても、その都市まで船舶でさかのぼることが可能な河川が存在すれば、水運型の商業都市として繁栄することができる。
河畔といっても、海からさほど離れていない場所ならば、海に直接面している場所よりも、安全性という点で良好な立地条件といえる。計画的に商業都市を建設する場合には、海に直接面した場所よりも、こうした場所の方か好まれるといってもよい。また、どんなに内陸部だったとしても、陸路より水路を利用する方がはるかに便利である。
河畔都市の形状は、河川の形と内陸交通の便によって決定するのがよいだろう。
①ローマ型
河畔都市といっても、河川に直接面していなくてもよい。たとえば、古代ローマ人たちは洪水を恐れたため、多くの都市か川から少し離れた場所に作られた。
ローマ型 |
②ノブゴロド型
比較的まっすぐに流れる河川の場合、河川が中心を通るように、円形状に発展するのか一般的である。
ノブゴロド型 |
③ケルン型
一方の側だけが発達するのは、その方向に多くの都市かあり、それだけ陸上の街道網が発達しているからである。
ケルン型 |
④ベルン型
河川が急激に曲がっている場所では、曲線の内側の方に都市を作る。その方が陸地側の防御がたやすいからだ。
ベルン型 |
⑤リューベック型
２本の河川に囲まれるような商業都市も作ることができる。しかし、２本の河川に囲まれている都市では、都市の規模がそれ以上に発展しないという欠点がある。
リューベック型 |
○運河都市
水運を利用した商業都市では、商業全体の規模が、だいたい港の大きさ (数)によって決まってくる。港が多ければ多いほど、より多くの船が同時に接岸でき、それだけ都市全体で扱う商品の量も増えてくるのは当然だ。
しかし、港の長さには限界がある。自然の状態を考えるなら、海洋都市では海に面した部分だけが、河畔都市では河に面した部分だけが港になるわけだ。
都市の領域を大きくすればよいと考える人もいるかもしれない。だが、都市を大きくするのは、商業機能が分散するためそう簡単にはできない。したかって、繁栄した商業都市では、限られた都市領域の中により多くの港を必要とするのである。
では、いったいどうすればよいのだろうか？ ここで考えられるのが運河だ。都市の中に運河をはりめぐらせれば、都市の大きさを変えずに港の数を大量に増やすことができるのである。
このように、運河をはりめぐらせた都市を運河都市という。したがって運河都市には、このような場所にあるという決まりがあるわけではない。繁栄している商業都市は、どこでもやがて運河都市へと変貌していくといえるのだ。
このよい例が、アムステルダムである。１４世紀のアムステルダムには、都市を囲むように２本の運河が流れているだけだ。このアムステルダムも、時代を経るにつれ、まるで蜘の巣のように運河をはりめぐらせた、巨大な、運河都市へと変貌していくのである。それは、商業規模の拡大のバロメーターといってもよいだろう。
巨大運河都市への変貌（アムステルダム） |
■陸運型の商業都市
船でさかのぼることかできないような内陸部にも人間は生きているし、人間が生きていれば、そこには当然商業が存在する。したがって、内陸部に内陸部型の商業都市を作りたいこともあるだろう。
このような場合、シルクロードのような貿易街道のそばに作るというのが基本だ。理想的なのは、多方向へ向かう街道の交差点だ。そのような場所には、いろいろな国の珍しい商品が集まり、いろいろな文化の混ざり合った、繁栄した商業都市が出現するのである。
■周辺地域の安全性
商業都市を作る場合、都市そのものの安全性だけでなく、周辺地域のことを考えることも大切だ。商業都市は、ただ単に交通の便がよく、安全というだけではだめなのである。
商業都市が成功するためには、その都市へ商品を輸送するまでの経路においても、ある程度の安全と自由が保証されることが必要なのだ。戦争状態にあるような敵国の中を、高価な商品を持って通過するわけにはいかない。また、割に合わないような通行料を取るような、傲慢な王が治める国を通らなければいけないというのも困りものである。
こうしたことを知っておくと、ファンタジーのストーリーを作る上でも役立つだろう。商業都市を困らせるためには、何も商業都市そのものを攻撃することはない。商品の輸送経路を攻撃しても、商業都市は莫大な損害を被るのである。
（本文中のイラストは深田雅人作） |
| 幻想都市計画論目次 |
第1章 都市のリアリティー
１ リアルとは？
２ 現実の都市を見る
３ 何から始めるか
第2章 目的別幻想都市計画論
■軍事都市
１ 理想の軍事都市をもとめて
２ 軍事都市の施設と機能
３ 脅威の存在が都市に与える影響
４ 立地場所を考える
５ 防壁のいろいろ
■宗教都市
１ 宗教都市とは何か？
２ 中心から都市を作る
３ 宗教都市の分析
４ 宗教都市の中身
５ 宗教都市らしさのために
■商業都市
１ なぜ商業都市なのか？
２ 商業都市の立地条件と形態
３ 商業都市の構造と要素
■行政都市
１ 行政都市の特徴
２ 王宮都市の形態
３ 王宮都市の構造と要素
４ 王宮のない中心都市
■鉱山都市
１ 鉱山都市の特徴
２ 鉱山都市の形態
３ 鉱山都市の構造と要素
■大学都市
１ 大学都市の特徴
２ 大学都市の形態
３ 大学都市の構造と要素
４ 魔法学院都市
■植民都市
１ 植民都市の特徴
２ 植民都市の形態
３ 植民都市の構造と要素
第３章 条件別幻想都市計画論
０ 概要
１ ｢立地場所｣から作る
２ ｢世界背景｣から作る
３ ｢気候条件｣から作る
４ ｢存在意義｣から作る
５ ｢規模｣から作る
６ ｢都市の中身｣から作る |
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イオの末裔
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