小説
イオの末裔
〔Kindle版〕
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《内容》
教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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| 第３章 条件別幻想都市計画論 |
サンプル都市ラビリンガム |
１ 都市と存在意義
■目的を限定した不思議な都市
ファンタジーの世界にはいろいろな種類の人間、魔法使い、妖精などが登場する。彼らは現実ではありえないようないろいろな目的を持っている。現実にはありえないような目的を持っているほど、その登場人物は魅力的だといってよい。
都市の場合にも、まったく同じことがいえる。現実にはありえないような存在意義を持つ都市は現実的な存在意義を持つ都市とはまったく違った、とてもファンタジックな魅力を持つのである。
しかも、ファンタジーの世界では現実ではありえないような存在意義をいくらでも作ることができる。人間が住むことなどまるで考えていないような純粋な軍事都市、海賊や盗賊の軍団が根拠地としているような秘密の都市、財宝を守ることだけを考えている都市など、いくらでも想像は広がっていくのである。
たとえば、海賊軍団や盗賊軍団の都市は普通の都市とは違って、絶対に人目に付かないところに隠れるように作られているだろう。海賊の都市なら、陸地から離れた孤島とか、非常に入り組んだ入江の奥の方に作られる。盗賊の都市なら、山の中の小さな盆地とか森の中に作られる。もし、人目に付くような場所にあるなら、そこが海賊や盗賊の都市だと見破られないように、いろいろなカモフラージュが施してあるはずだ。そして、都市の中には盗品を隠すための秘密の倉庫のような場所があるだろう。それは、洞穴のような場所かもしれないし、教会の塔のような場所かもしれない。
こんなふうに、都市の特別な存在意義に忠実に作っていくと、自然と、現実にはありえないような都市ができあがるのである。
また｢どうしてこんな都市があるんだろう？｣という疑問に対して、存在意義はある解答を与えてくれるものだ。｢こん都市があるわけない！｣というような都市でも、そこに理由があれば、誰もがなるほどと納得できるのだ。
■財宝を守るための迷路都市
ラビリンガムは国中で一番大事な財宝を守るためだけに作られた、巨大な迷路都市だ｡
この都市は、都市全体ガ複雑に入り組んだ迷路型の城壁からできており、その中央に財宝が置かれている。建物らしい建物はどこにもなく、市民はみんな迷路型城壁の壁の中に住んでいる。通常の街路のように見えるのは、実は都市の迷路で、本当の街路は城壁の上にある。その街路は迷路に迷い込んだ盗賊たちを攻撃するための役目も持っている。誰かが迷い込むと番人たちはすぐに城壁の上を移動し、強盗を攻撃して殺してしまうのだ。迷路には数多くの罠もしかけられているので、番人を待たずに、罠にはまってしまう強盗も多い。
財宝を守ることが目的だから、この都市で暮らしている市民もほとんどが財宝の番人で、それ以外は彼らの家族と小数の商工業者しか住んでいない。手工業者は番人のために剣や楯などの武器を作り、商人たちは食料や衣料を運んでくるのだ。
迷路を作り変えるための大工も、この都市では重要な存在だ。強盗たちの中には迷路都市の地図を作るものもいるので、都市では絶えず、迷路を作り替えているのである。その工事は毎日行われている。どこかで城壁が壊され、別なところで、新しい城壁が作られているのだ。だから、都市の市民にさえ全体の構造を理解しているものは少ない。そのため、市民自身が都市の中で遭難してしまうこともあるのだ。
[１]立地条件
城壁を迷路にしているので、平野の真ん中が理想といってよいだろう。近くに高い山などがあると、迷路の構造を盗まれることもある。もちろん、迷路は毎日作。変えられているので、構造を知られても簡単に財宝を盗まれることはない。だが、万が一ということもあるので、都市の内部構造を外部からはけっして覗かれないような場所が理想なのである。
このような迷路都市なら、海の上にあってもおもしろいだろう。この場合、海賊たちが海賊船に乗ったままで迷路の中に迷い込むわけだ。
[２]世界背景
城壁がメインの都市だから、全体的に中世以前の雰囲気だろう。その時代なら、空を飛ぶような機械はないから、迷路都市は財宝を守るのに大いに役立つはすだ。都市の構造は古代の城砦を巨大化して、さらに複雑にしたようなところがあるので、古代であってもかまわないと思う。
[３]気候条件
この都市は迷路によって強盗を防ぐところに魅力がある。だから気候条件はあまり、極端なものでないほうがよいだろう。しかし、灼熱地帯や極寒地帯でもかまわない。その場合には当然迷路の中で焼け死んだり、凍え死んだりということも起こってくる。それだけ、強盗にとっては襲いにくい都市になるわけだ。
[４]規模
大きければ大きいほど、迷路都市はおもしろいものになるだろう。しかし、都市が大きくなると、番人の数も増やさなければならない。都市の大きさに比べて番人の数が少ないと、迷路に迷い込んだ盗賊たちを攻撃するのが大変だ。目的の場所に行くまでに番人の方が疲れてしまう。
[５]都市の中にあるもの
驚くことに、都市の中には建物らしい建物はどこにもない。都市の全体が城壁でできているのだ。市民たちはその城壁の中に住んでいて、城壁の上の通路が街路になっている。だから、都市を真上から見るとどう見ても完全な迷路なのである。
財宝は都市の真ん中の宝物庫にある。宝物庫は高い塔になっており、迷路の中からも見えることがある。しかし、宝物庫が見えても盗賊にとっては何の役にも立たない。その方向に進んでも、迷路は行き止まりになってしまうからだ。反対に、宝物庫のてっぺんは監視塔のようになっていて、そこから盗賊たちの動きが手に取るように見えてしまうのだ。そのため、盗賊たちが迷路のどこに逃げても番人たちがすぐに攻撃を仕掛けてくるのである。
２ ファンタジックな存在意義
■いろいろな存在意義
ファンタジーの世界ではいくらでも、いろいろな存在意義を持つ都市を作ることができる。第２章では都市作りの基本として、一般的な存在意義を取りあげ、それぞれどのような都市を作ればよいかを紹介した。これらの都市はそのままでも十分にファンタジーの世界で通用するものだ。
しかし、ファンタジーの世界では第２章で紹介したものだけでなく、実にさまざまな存在意義を考えることができる。自由な想像の翼を広げれば、ファンタジックな存在意義は次から次へと浮かんでくるはずだ。
また、ファンタジーの世界では人間だけでなく、魔法使いや妖精たちも都市を作ることがあるだろう。そして、人間とそれ以外のものでは都市を作る日的も大きく違ってくるはずだ。
そこでここでは、ファンタジックな存在意義を次のように分類して、それぞれどのようなタイプが考えられるか紹介しよう。
[１]人間が作った都市
[２]魔法使いが作った都市
[３]妖精が作った都市
■人間が作った都市
ファンタジーの世界で人間が都市を作るとしたら、どんな存在意義があるだろう。そんなふうに考えて想像したのが、ここで紹介する都市だ。
[１]遊びのためだけの娯楽都市
まるでラスベガスのように、遊びのために作られた都市だ。考え得る限りの遊びがこの都市には存在している。周辺の都市で生活している人々はお金をためてはこの娯楽都市へ遊びにくるのだ。都市の経済はすべてこれらの観光客からの収入から成り立っている。しかし、こんな都市だけに治安はあまりよいとはいえない。観光客を狙った強盗たちの隠れ家が都市のあちこちにあって、観光客を悩ませているのである。
[２]秘密保持のための鉱山都市
一見すると鉱山都市だが、それは世を欺く仮の姿で、実は鉱山の奥深くに先祖代々伝えられた秘宝を隠しているというのがこの都市だ。この都市に生まれた人間は生まれながらに秘宝を守るガーディアンの宿命を持っている。実際に鉱山の仕事も行っているので、この都市にいる限り経済的に困るということはない。だから、この都市に生まれたものは一生をこの都市で終わり、秘宝の秘密が漏れることもないのである。しかも、場所は山奥で交通も不便だ。数カ月に１度だけ、業者が石炭と食料などを交換にくるだけなのである。実に奇妙な都市だが、表向きは立派な鉱山都市なので誰も怪しむ者はいない。
[３]財宝を守るための迷路都市
この都市は多くの者たちが狙っている責重な財宝を守るため、都市全体が巨大な迷路になっている。財宝は都市の中央にあって、その周りのすべてが迷路になっているのだ。迷路を作っているのは、城壁でも建物でもよいだろう。そして、迷路に迷い込んだ強盗たちを市民たちが城壁や建物の上から攻撃するのである。ラビリンガムはまさにこのような都市として作ったものだ。
[４]海賊の隠れる秘密都市
これは商人たちの財宝を積んだ船を襲撃する海賊たちが隠れ家として使っている秘密の都市である。とても人間が住んでいるようには見えない岩山ばかりの孤島にこの都市はある。海賊たちの港も深く食い込んだ入江の中にあって、島の周囲からは絶対に発見されることはない。生活に必要なものは海賊が商人を装って近くの都市に買いに行く。だからこの都市の存在は普通の人間は誰も知らない。しかし、海賊仲間には有名で、いろいろな国の海賊たちがこの都市に集まり、とても賑やかな都市に発展しているのである。
■魔法使いが作った都市
魔法使いが作る都市は人間が作る都市とはまったく異なる存在意義を持っているだろう。それは人間が考える都市よりもはるかにユニークで、不思議なものになるのではないだろうか？
[１]占星術者たちの天体観測都市
これは、人間の運命や未来を占う占星術者が占星術の基本である星を見るためだけに作った都市だ。当然、空気のきれいな、夜空の星がよく見えるような、高い山の中にある。都市の建物も占星術者らしく、屋根に窓があり、夜空の星がよく見えるようになっている。占星術の新しい学説などもしばしばこの都市で生まれるので、占星術者にとっては憧れの都市になっている。それだけ占いや予言も正確で、自分の運命を知りたがる人間たちも数多く訪れる。だからこの都市は占星術者だけしかいないのに、とても繁栄しているのである。
[２]金を作るための錬金術都市
全体的な雰囲気は鉱山都市だが、ここでは産出した（金ではない）鉱物を加工して、金を作り出している。金が産出しない国の王が、魔法使いや錬金術師を集めて、秘密のうちに作った都市だ。金の作り方はもちろん都市の秘密になっており、秘伝を伝える書物が都市のどこかに隠してある。しかし、錬金術都市の存在は他国でもうすうす感づいており、しばしばスパイが送り込まれるのだ。そのため、一種の鉱山都市にしては警備はものすごく厳重だ。
■妖精が作った都市
妖精たちはおそらく人間には考えつかないような幻想的な都市を作るのではないだろうか。都市の存在意義も人間的な欲望からはかけ離れた、夢や希望に満ちたものになるだろう。
[１]妖精たちの楽園都市
妖精たちだけが住むことのできる楽園のような都市だ。しかし、この都市は妖精たちがいつも暮らしているというわけではなく、いわば妖精たちの避難場所といってよいものだ。妖精たちは普段は別の場所に暮らしているか、その場所が人間に荒らされたような場合に、一時的にこの都市に逃げてくるのだ。そして、新しい住処が見つかったら、この都市を出て行く。妖精たちが住むのだから、立地場所は地中でも空中でもどこでもかまれないだろう。ただ、何もかもが人間離れした幻想的な雰囲気に満たされた都市なのである。
[２]遭難者を助ける妖精都市
雪山で遭難した商人や、海で難破した船乗りたちを救助するのを目的に妖精たちが作った都市だ。妖精たちは遭難者を発見すると、すぐに彼らを地下や海の底にあるこの都市に運び、手厚く看病するのである。そして、救助隊や別な旅人が遭難場所を通りかかったときに、遭難者をもとの場所へと戻すのだ。このため、１か月も前に雪山で遭難した商人が遭難場所で生きたまま発見されるという、不思議なことが起こるのである。妖精たちは注意深く、遭難者から妖精都市の記憶を消してしまうが、中には覚えているものもいる。そんな者たちは助けられるとすぐに、不思議な妖精都市の話をするが、人間たちは夢でも見ていたのだといって誰も信じないのである。
（本文中のイラストは深田雅人作） |
| 幻想都市計画論目次 |
第1章 都市のリアリティー
１ リアルとは？
２ 現実の都市を見る
３ 何から始めるか
第2章 目的別幻想都市計画論
■軍事都市
１ 理想の軍事都市をもとめて
２ 軍事都市の施設と機能
３ 脅威の存在が都市に与える影響
４ 立地場所を考える
５ 防壁のいろいろ
■宗教都市
１ 宗教都市とは何か？
２ 中心から都市を作る
３ 宗教都市の分析
４ 宗教都市の中身
５ 宗教都市らしさのために
■商業都市
１ なぜ商業都市なのか？
２ 商業都市の立地条件と形態
３ 商業都市の構造と要素
■行政都市
１ 行政都市の特徴
２ 王宮都市の形態
３ 王宮都市の構造と要素
４ 王宮のない中心都市
■鉱山都市
１ 鉱山都市の特徴
２ 鉱山都市の形態
３ 鉱山都市の構造と要素
■大学都市
１ 大学都市の特徴
２ 大学都市の形態
３ 大学都市の構造と要素
４ 魔法学院都市
■植民都市
１ 植民都市の特徴
２ 植民都市の形態
３ 植民都市の構造と要素
第３章 条件別幻想都市計画論
０ 概要
１ ｢立地場所｣から作る
２ ｢世界背景｣から作る
３ ｢気候条件｣から作る
４ ｢存在意義｣から作る
５ ｢規模｣から作る
６ ｢都市の中身｣から作る |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆（鬼塚サヤ）の孫として生まれた鬼塚宏樹（主人公＝私）は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のＫ市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。 |
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