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フランボワイヤン・ワールド
世界の終わりの話
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 小説
イオの末裔
〔Kindle版〕

販売開始しました。
《内容》
 教団拡大のために凶悪な犯罪もいとわない《鬼神真教》の教祖・サヤ婆(鬼塚サヤ)の孫として生まれた鬼塚宏樹(主人公=私)は鬼塚一族の残酷な行為を嫌って一族の家から逃亡し、裏切り者として追われる身になる。その恐怖から彼は各地を転々として暮らすしかない。やがて彼は大都市のK市である女に出会い、一時的に幸福な暮らしを手に入れる。だが、そんなある日、大都市の町中でサヤ婆を狂信する磯崎夫妻の姿を見つける。そのときから、彼の恐怖の一日が始まる。恐るべき鬼塚一族の人々が次々と彼の行く手に出現する。…、そして、彼の逃亡がまた始まる。はたして、彼は逃げ切れるのか。鬼塚一族の魔の手を逃れ、自由な暮らしを手に入れられるのか。

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第二部 神話・終末文書に描かれた終末
第一章 円環的な歴史の中の終末
神々の黄昏―北欧神話の終末
北欧神話の基礎知識

 デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなど北欧の国々で語られていた神話の中には、この世の終わりに人間ばかりか神々までが死に絶えて、その後に再び新しい世界が始まるという考え方がみられる。ところで、北欧神話といっても、その内容を確認することのできる文献は北欧の国々で書かれたわけではない。
 勇猛果敢なヴァイキングを生んだ北欧の人々は、彼らの神話を詳しく書き記しはしなかった。それは語り継がれ、後の時代に集中的に文書の形にまとめられたのである。中世アイスランドの文人スノツリ・ストウルルソン(1179-1241年)がまとめた詩学入門書『エッダ』はもちろんのこと、エッダ詩集やサガなど、北欧神話の内容を伝えているといわれる重要な詩集や散文作品は、だいたいが8世紀から13世紀頃にアイスランドで写本に記されたり、作られたりしたものである。略奪を目的としてヨーロッパ各地を襲ったヴァイキングの一派の中の、アイスランドに住み着いた者たちの子孫がこれらの作品をまとめたわけだ。したがって、北欧神話と呼ばれるものが、どれほど古い時代から語られていたか正確なことはわかっていない。しかし、インド神話との比較などから、インド・ヨーロッパ語族が分化する以前の特徴などがみつけられており、北欧神話が古代から語られていたことは確実となっている。
 アイスランドでは、紀元1000年にキリスト教が国教と定められているので、これらの作品の中にはわずかだがキリスト教の影響も認められる。例えば、14世紀初期に写本されたエッダ『巫女の予言(*1)』では、新しい時代に海中から大地が出現した後、神が来臨すると伝えている。したがって、新しい時代は神の支配する永遠の幸福の王国だと考えられるが、これはキリスト教の影響を受けたものといわれている。
 そこで本書では作品の中にみられるキリスト教的な影響は考慮せず、古い時代の終わりと新しい時代の始まりを持つ北欧神話を、永劫回帰の神話の中に位置付けた。

*1 巫女の予言:エッダ詩集の中心的な詩編で、作品が成立したのは10世紀末だったといわれている。


ギンヌンガガプより始まる

 北欧神話では、終末のときが来ると、フェンリル狼、狂犬ガルム、世界蛇ヨルムンガンド、火の巨人スルト、地獄の怪蛇ニーズホッグといった怪物たちが世界の果てともいえる場所から一挙に大地に押し寄せ、神々との間に激しい戦いを繰り広げ、神々と相打ちすることでこの世を滅ぼす。これほどの怪物が一挙に登場する終末の場面は他の神話にもそれほど多くはないし、激しさという点でも群を抜いているといえる。しかし、これらの怪物たちは終末の場面になって初めて登場するわけではなく、世界の始まったばかりのころから存在し、神々を脅かす存在だったのである。
 北欧神話では、世界の始まり以前には海も大地も空もなく、どこまでも空虚なギンヌンガガプという深淵だけがあったとされている。次いで、ギンヌンガガプの北の果てに闇と氷の世界ニフルヘイムが、南の果てに炎の燃え盛る世界ムスペッルヘイムが誕生する。ムスペッルヘイムからの熱気でニフルヘイムの氷が溶け、ギンヌンガガプに流れ込んで再び凝固すると、その氷から巨人ユミルや北欧神話の主神であるオージンとその兄弟であるヴィリとヴェーが誕生する。巨人ユミルは数多くの子供を作ったので、しばらくは巨人の時代が続く。この巨人たちは普通、霜の巨人族と呼ばれる。しかし、3柱の神が巨人ユミルを殺すと、その傷口から流れ出た血が大洪水となって、ほとんどの巨人たちは死に絶えた。ただ1組の巨人の夫婦だけが丸木舟に乗って生き延び、新しい巨人の種族が現在の世界の果てにある巨人の国ヨトゥンヘイムで暮らしているという。
 その後、オージンたち3柱の神は、巨人ユミルの身体を解体し、血や肉や骨を使って神や人間が住むための世界を作った。また、世界を作った後で、トネリコの木から人間を作り出した。
 このようにしてできあがった世界には円形をした3つの層があった。一番上が神の国アースガルズ、2番目が人間の住むミズガルズ、3番目が冥界ニフルヘイムである。これら3層の世界を突き抜けるように世界樹ユッグドラシルが生えており、3層の世界のそれぞれに根を張って世界を支えていた。このほかに巨人の国ヨトゥンヘイムなどもあったが、それはミズガルズを取り巻く海の果てにあるとされた。

悪神ロキと3人の子供たち

 世界が完成するといよいよ神々の物語が始まる。この物語の初期の段階で、神々と敵対する重要な3人(匹?)の怪物が誕生する。北欧神話には、主神であるオージンを中心に、戦いの神ソール、豊穣の神フレイなど数多くの神々が登場するが、これらの神々の中にロキという一風変わった悪神がいた。ロキは巨人族の出身でありながら、何故か神々の一員となっていたが、あるときヨトゥンヘイムに住む巨人族の女アングルボザと交わって、3人の怪物の子供をもうけた。1人目はフェンリル狼、2人目はヨルムンガンド(世界蛇)、3人目はヘルで、ヘルだけは女だった。この3兄妹はヨトゥンヘイムで育てられていたが、予言によって彼らから大きな災いがもたらされることを知った神々は、彼らを自分たちの元に連れてきた。それから、ヨルムンガンドを、大地ミズガルズを取り巻く深い海の底に投げ込んだ。ヨルムンガンドはそこでどんどんと成長し、ついに大地の周囲を一周するほどの大きさになると、自分の尾の先を口にくわえて海底に横たわった。次いでオージンは、ヘルをニフルヘイムに投げ込み、病気や老衰で死んだ人間が赴く冥界の支配権を与えた。(i)このときから、ニフルヘイムは死者の国となったが、ヘルはこの国に立派な宮殿を構え、やってきた死者たちに住まいを割り当てたのである。彼女の宮殿には大門があり、そこにはガルムという凶暴な番犬が見張りに付けられた。また、ニフルヘイムにあるフウェルゲルミルの泉には怪蛇ニーズホッグが住み、その泉に延びているユッグドラシルの根をかじっていた。

フェンリル狼を捕獲した勇気

 怪物3兄妹の中で最も手強かったのはフェンリル狼だった。そこで、神々はこの怪物だけは自分たちの手元で育てることにした。しかし、フェンリル狼は凶暴なうえ、日々大きくなっていくのでさすがの神々も恐れをなし、何かの方法で狼を動けないようにすることにした。神々は頑丈なレージングという足枷を作り、フェンリル狼のところに持っていくと、その足枷を付けることで自分の力を試してみるようにそそのかした。狼はいわれたとおり足枷を付け、足を突っ張って簡単に壊してしまった。神々はさらに強力なドローミという足枷を作ったが、狼はこの足枷も壊してしまった。そこで、神々は最後の手段として、地下に住む小人族にグレイプニルという魔法の紐を作らせた。それから、フェンリル狼を湖の中の小島に連れていき、この紐で自分の力を試すようにそそのかした。フェンリル狼はその紐が魔法で作られていると直感したので、神々の中の誰かが自分の口に手を入れて置くならば、その紐で力試しをしてもいいといった。ほとんどの神々がためらったが、このとき法律の神であるテュールが手を伸ばした。こうして、フェンリル狼はついにけっしてちぎれない紐で捕縛されたが、その代わりにテュール神は右手を失ったのである。フェンリル狼を捕縛した神々は、ゲルギャという綱で狼を板状の大きな石に結びつけ、その石を地中深く埋めた。このため、フェンリル狼はこの世の終わりのときまで、その場所に横たわっていることになったのである。
 これよりもかなり後のことだが、怪物3姉妹の父である悪神ロキも、神々によって捕らえられ、洞窟の中に閉じ込められることになった。ロキがオージンの息子のバルドルを殺したのが原因だった。ロキは神々から逃れると、山中の滝で鮭に変身して暮らしていたが、ついに神々に捕らえられ、洞窟の中の尖った石に縛り付けられた。神々はロキを苦しめるために、毒蛇を捕まえると彼の顔の上方にしっかりと止め、その毒液がロキの上に滴り落ちるようにした。ロキの妻シギュンが彼のそばにいて毒の滴りの下にたらいを手にしていたので、ロキは常に苦しむわけではなかった。しかし、手にしたたらいが毒でいっぱいになるとシギュンはその場を離れて毒を捨てにいったので、その間、毒がロキの顔に滴った。このときばかりはロキが激しく地を震わせて苦しんだので、このときの大地の震えが人間の世界で地震と呼ばれたのだという。
 こうして、神々は悪神ロキやその子供である怪物たちを神々と人間の世界から追い払った。しかし、ロキも怪物たちも、永遠に追放されたままでいるわけではなかった。彼らが追放されているのは終末のときまでで、そのときになると、彼らはこぞって神と人間の世界にやってくる運命にあったのである。


ラグナロク(神々の黄昏)の前兆

 北欧神話では、終末のときは「ラグナロク(神々の運命)」と呼ばれる。(ii)このときがいつやってくるかはわからない。しかし、いくつかの前兆らしきものはあるようで、そのときの前に3度続けて冬がやってくるという。これは大いなる冬と呼ばれる特別な冬で、この間は太陽が照ることはないし、夏が来ることもない。風は強く、あらゆる方向から雪が降りつける冬である。この季節に、人間は互いに争いあうようになり、地上は無法地帯となり、戦争状態が広がっていく。親子兄弟姉妹が見境なく殺しあったり、姦淫しあったりするのである。それからふいに、ラグナロクの到来を告げる3羽の雄鶏の鳴き声が響く。1羽は巨人の国ヨトゥンヘイムに住むフィヤラルという雄鶏、1羽は神の国アースガルズに住む黄金の鶏冠のグッリンカンビという雄鶏、1羽はニフルヘイムに住む煤赤色(すすあかいろ)の雄鶏である。
 ラグナロクが始まると大事件が連続して起こる。手始めに、太陽と月が、後ろから追いかけてきた狼に飲み込まれてしまう。太陽を飲み込むのはスコル、月を飲み込むのはハティという名の狼で、2匹ともこの世が誕生したときから太陽と月の後を追いかけ続けていた狼だった。地上では、大地や山々が激しく揺れ、樹木は地面から抜け、山が音を立てて崩れる。

怪物たちの復活

 魔法の紐で捕縛されていたフェンリル狼も自由になって暴れ出す。この狼はいまではさらに巨大になって、口を開くと上顎が天に下顎が地に着いてしまい、目と鼻からは火が吹き出している。海の底に横たわっていた世界蛇ヨルムンガンドも泳ぎ出し、陸に上がろうとして押し寄せる。この蛇は毒を吹き出して、海も空も汚してしまう。激しい大音響とともに空は裂け、火の国ムスペッルヘイムで門番をしていたスルトが大勢の火の巨人たちを引き連れて大地の上に攻め寄せてくる。彼らの前にも後ろにも燃え盛る火がある。ヨトゥンヘイムに住んでいた霜の巨人族たちも、ナグルファルという船に乗って押し寄せてくる。悪神ロキも捕縛を解かれ、ヘルの仲間たちを率いてやってくる。怪物たちはみな、神々との最終戦争が行われるヴィーグリーズという広野に集まる。

神々の壮絶な最終戦争

 見張り役の神ヘイムダッルはこの出来事を見つけると、すぐに角笛ギャッラルホルンを吹き鳴らし、神々に非常事態を知らせる。神々は会議を開き、出陣する。オージンの兵士であるエインヘリャル(iii)たちも鎧に身を固めて、広野を目指す。
 この戦争で誰もが死んでしまう。先頭を進んできた神々の王オージンはフェンリル狼に戦いを挑み、飲み込まれる。これを見たオージンの息子ヴィーザルがフェンリル狼の心臓に剣を突き立てて、父の敵を討つ。戦いの神ソールがヨルムンガンドに戦いを挑み、激しい格闘の末に打ち破る。が、よろめきながら9歩退いたところで、ソールもまた死んでしまう。法律の神テュールは冥府の番犬ガルムと、ヘイムダッルは悪神ロキと戦い、相打ちとなってみな死んでしまう。豊穣の神フレイは火の巨人スルトに立ち向かい、炎の剣で切り殺されてしまう。戦いの場には最後にスルトだけが生き残り、猛火を放って地上のすべてを燃やし尽くす。この戦いのために死んだ数え切れない死者がニフルヘイムにやってくると、怪竜ニーズホッグと鷲のフレースヴェルグが、その死体をむさぼり喰ってしまう。
 こうして、世界は破滅してしまうのである。

世界の新生

 北欧神話の終末はとてつもなく激しいものなので、その後に誰かが生き残っているとはとても思えない。しかし、北欧神話は世界の破滅の後に始まる新しい世界についても語っている。
 火の巨人スルトが猛火でこの世のすべてを滅亡させた後のことである。海の中から緑の樹木に覆われた豊かな大地が出現するのである。この大地は種をまかなくても穀物が育つような理想的な大地である。それから、神々の何人かが冥府からよみがえり、この地を支配するのだという。
 この地には人間も存在する。リーヴという男とリーヴスラシルという女である。そして、この2人から新しい人類が始まるのである。
 その後、どのような物語が始まるのか。それについて、北欧神話は語っていない。しかし、古い時代の終末と新しい時代の始まりから、かつてと同じ世界が再び繰り返されると考えても、それほど無理はないといえるだろう。(iv)

i 北欧神話では戦争で死んだ兵士の戦死者は特別な存在で、死後はオージンの兵士となって、神の国にあるヴァルホル宮殿で暮らすとされている。この兵士たちはエインヘリャルと呼ばれる。

ii スノッリ・ストゥルルソンはこの言葉を「ラグナレク(神々の暗闇)」といいかえて使っている。ドイツの作曲家ワーグナーの『神々の黄昏』はこの言葉から来ている。

iii 注1参照。

iv 14世紀初期に写本されたエッダ『巫女の予言』では、新しい時代に海中から大地が出現した後、神が来臨すると伝えている。したがって、新しい時代は神の支配する永遠の幸福の王国だと考えられるが、このような記述はキリスト教の影響によって書かれたものだろうといわれている。そこで、本書では古い時代の終わりと新しい時代の始まりを持つ北欧神話を、永劫回帰の神話の中に位置づけた。 
世界の終わりの話目次
第1部 世紀末と終末論
世紀末と終末論の基礎知識
歴史観と終末論の種類
世界の紀年法と暦法

第2部 神話・終末文書に描かれた終末
第1章 円環的な歴史の中の終末
概説
洪水神話
北欧神話の終末(ラグナレク)
ヒンズー教の終末(永劫回帰)

第2章 直線的歴史と終末
概説/ユダヤ・キリスト教の終末文書
ダニエル書の描く終末
ヨハネの黙示録の描く終末
死海文書が描く終末
エチオピア語エノク書に描かれた終末
シリア語バルク書が描く終末
シビュラの託宣が描く終末
エズラ記(ラテン語)に描かれた終末
マラキ書が描く終末
コーランに描かれた終末

第3章 異教の終末文書
概説
ゾロアスター教の終末
仏教と末法思想の終末
マヤ・アステカ神話の終末
グノーシス主義が描く終末
パウロの黙示録に描かれた終末

第4章 千年王国思想
概説
『神の国』の千年王国
フィオーレのヨアキムが語る千年王国
カンパネッラの語る『太陽の都』

第三部 19世紀の世紀末と終末観

近代にも生きている終末思想
進化の果てに訪れる絶望的世界―H.G.ウエルズ『タイム・マシン』―1895
世紀末の人工ユートピアを求めて―J.K.ユイスマンス『さかしま』―1884
あとがき―未来が終末を迎えた 

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